4月6日 伴天連 お春

naringo
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公開:2025/4/7

日本に住んでいた頃友達と一緒にとある美術館に行ったことがあった。特に目的もなく訪れたそこで心を奪われたというか、でもなんかそんな綺麗な言葉じゃなくって、本当に私の中で “刺さった” というか「あっ、これやばいな」って絵があって。松本華羊の『伴天連 お春』という絵。伴天連とはキリシタンのこと。キリシタンであるがゆえ捕らえられ、最期の望みに桜を見ている女性の絵だ。

桜が満開の中、これから死にゆくこの人は何を思うのだろう。望みが叶い、桜を見れたことで覚悟を決め生きることへの諦め感じる反面、恐怖がない表情は安らかだけど物悲しげを感じる。

桜を見ると『伴天連 お春』を思い出すし、父のお葬式の日も桜が満開だった。「死」が浮かんでくるので複雑な気持ちだけど、でも何にも例えようのない儚い美しさにはどう足掻いても心を奪われる。太宰治の『斜陽』で「夏の花が好きなひとは、夏に死ぬっていうけれども、本当かしら。」って台詞がある。その道理が春でも通るなら、私もきっと春に死ぬ。

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