・書くべきことは何もない。
・この言い回し、なにかの小説で似たようなものがあったような記憶があるが、どの小説だったか。確かサルトルかウエルベックだった気がする。
・「このボールペンかわいい、買おうかな」「買えばいいじゃん」「でもすでに死ぬほど(ボールペンが)あるし」「本体だけ買えば?」「本体だけって売ってないでしょ」「でも芯のない外側だけのボールペンは『本体』ではないよな、ガワだけ?」「ガワ(笑)」一昨日の会話。
・「ここ最近の生活の質や精神状態が著しく悪いのは部屋が汚いからだよな」という旨の内容を書こうとしたが、それは逆に精神状態が悪いからこそ普段は気にならないようなもの(自身の乱雑な部屋)に対してもストレスを感じてしまう……という物言いも同時に可能であり、あまりこの手の言及には意味がないなという事に気がついた。……とはいえ、せめて布団の周りぐらいは整頓してもいいかもしれない。
・一般にキャラクターコンテンツの同人誌即売会で購入した品は「戦利品」という表現がされる……というかむしろ他の表現が存在しないぐらいの勢いだが、そもそも即売会を「戦」だと思ったことがないので、全くしっくりこない。この「戦利品」という表現はおそらく近年のコミケなど参加者数が異常に多いイベントにおいてはサークルを回る立ち回りや移動経路の入念な確認が頒布物を入手できるか(私は書籍にしか興味がないのでそこまでではないが、おそらく会場限定のグッズなどを狙うオタクはそこが死活問題になるのだろう)を大きく左右するために、その様が「戦」とたとえられるようになったのだろう。いやだとしても全くしっくりこない表現ではあるのだが、この「しっくりこなさ」に対する鋭敏な感覚こそが言語運用におけるセンスを構築するもののひとつではあるのだと思う。ただあんまりこの「センス」にこだわり過ぎるとそれこそ神経症的になり過ぎて(上の「死活問題」みたいな慣用語も許せなくなるだろう)筆が進みにくくなるという側面もあるように思われる。高度に彫琢された言語感覚とそれに裏打ちされた文体は、病的なまでの神経質さを伴うものなのかもしれない。
・上の段落、なんか随分大味な落とし所になったな。こんなの別にそれなりに文章を書く人間なら経験的に知っていることだろう(し、この程度の内容はすでのどっかの作家が書いているだろう。三島由紀夫あたりがプルーストを論じるときに言いそうなことではある。というか言っていたかもしれない。読んだ記憶を忘れているだけで)。この程度の長さの文で無理に落とし所を作ろうとしない方が良いのかもしれない。いや、「落とし所を作ろうとしないほうがいいのかもしれない」という印象の話ではなく、落とし所を作ろうとしすぎる意識がときには文章の流れを邪魔することがある、という「原則」の話。
・というかこんなことを書きたいわけではなかった。SSFで購入した本の感想をここで書いてもいいかもしれない、という一文を書こうとしていただけなのだった。そこで「戦利品」という表現を使うべきかで一瞬手が止まっての上の話なのだった。その手の硬直の裏には上述のような思考が伴っていた、というメモ書きを残しておこうということで。
・こんなところに同人誌の感想を書いたところでおそらく著者の元には届かないが、もとより感想を著者に伝えたいわけではないのでべつにいいかもしれない。ここならば読みたいときに読んで書きたいときに感想を書ける(過度に読むのが遅れたことで「旬が過ぎ」て、「今さら」な雰囲気になることがない)し、感想に困る本は何も言わずにおくということもできるしで、のびのびと気楽に読める気がする。というか、こういう「旬が過ぎ」ることに対して過度に不安にさせるというのがSNSの特徴のひとつで、むしろSNSにおけるファンダムはこうしたこうした共時的なつながりでユーザーを「不安にさせる」ことでそのコミュニティを強固なものにする……という側面があるわけよな。その「旬」の流れとその早さに適応できる人間はSNSの利点と恩恵を十全に享受できるわけだが、残念ながら自分はそうではなかったと……
・「感想」ということで、一個思い出したやりとりがあった。たまたま目に掛けた同人誌が気になり、かなり分厚い本だったので「読んでも良いですか?」と聞いた上で中身を見た。その時は全体をぱーっとめくって(個人の頒布する同人誌としてはめったに見れないほどかなり分厚い本だったので、いちおう合同誌かそうじゃないかを確認したかったのと、大まかな構成や登場人物を把握したかった)、前半2,30ページぐらいを読み雰囲気が良さげだったので購入を決めたのだが、本を手渡される際に「読んだらよければ感想とか聞かせてください!」と食い気味に伝えられたのだった。おそらくその人としては特に他意はなく単純に感想を聞きたいだけだったと思う(思いたい)のだが、そのときの自分はといえば、全体の十分の一程度だけ読んで購入を決めたことを「中をちゃんと読まずに雑に買おうとした」と気分を害して、本当に中身を面白いと思って買ってくれたのかを確かめるためにあのようなことを言ったのではないか、と疑心暗鬼になったのだった。いま冷静に振りかえるとさすがにそんな入り組んだことを考えているわけもないと思う(思いたい)し、なんならそういう発想が浮ぶこと自体が失礼にすら思われる。が、あのときはこうした不安を真剣に感じたというのも確かな事実ではある。改めて、自分はこうした「自身のリアクションが何らかの形で相手に不快な印象を与えてしまっている」ことへのシグナルが過度に敏感であることに気づかされた。
・冒頭に「書くべきことは何もない」とか書いておきながら結構な字数になったな。いくら書くことがないとはいえ、結局キーボードの前に座ってたら勝手にあれこれ考えるし、勝手に手も進む。これだけダラダラ書いて等の同人誌の話を一切していないが、まだ一冊も読んでいないのだからそれはまぁ仕方がない。