漫画ネーム言語を考えてみる。漫画は木の形をしているだろうか。

nawashiro
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前々から漫画ネームは専用の機械可読な言語が必要だと思っていた。いくら完成品はバイナリの塊といえど、原作やネームはテキストで記述する。そして漫画はチームで作るものである。どれだけ関わる人数が少なくても編集者くらいいるものである。これだけの要件を満たすならば、Gitで管理できたほうが絶対に楽なはずだ。

何を使うか考えてみる。素朴にXMLとかでいいだろうか。JSONを人間に書かせるのはなんかコレジャナイ感がある。

XMLについて改めて調べてみる。

XMLはマークアップ言語の一種である。マークアップとは組版指定、要するに印刷業者などに対する指示を指す。テキストに対して「<見出し>【速報】岸田総理が全世界195か国に宣戦布告</見出し>」という具合にタグを付けていく。物語の設計を考えるとき「<序>桃から生まれた桃太郎がおじいさんおばあさんと共に育つ。鬼の目に余る悪行に憤慨し族殺を誓う</序><破>旅の中イヌ、サル、キジ、オッペンハイマーを仲間に加える</破><急>リトルボーイとファットマンが鬼ヶ島のふたつの都市を蒸発させる。オッペンハイマーは言う「桃太郎さん、私の手は血に濡れています」</急>」みたいな感じで使えないか。

XMLは木構造のデータを扱う。漫画は木の形をしているだろうか。一編の漫画があり、内容を序破急に分類してみる。もっと細かく見ていけば1ページごとに見ていける。ページは横に割られ、さらに縦に割られコマとなる。木の形をしていそうだ。ぶち抜きなどいろいろ例外はありそうだが、あくまで基本的な設計を行うための道具なので気にしなくても良いのではないか。いや、あとで考える余地を残すために拡張できるようにしておくべきか。マルチエンディングなどを考えれば木構造ではなくグラフ構造になりそうだが、マルチエンディングの漫画を読んだことがないので何とも言えない。

コマが扱えるようになったので、コマの中を検討していく。とはいっても、プレーンテキストでいい気がする、ネームだし。台詞や思案、モノローグなどは専用のタグが必要だろうか。

これらの制約(スキーマという)に従い漫画家がXMLを書いてコミットする。統合開発環境があれば快適だろう。Githubに上がったとき、自動的にPDFに変換されたり台詞部分の校正が行われたりする。編集者やほかのスタッフが内容を見て、問題点(イシューという)や改善案(プルリクエストという)を投げつける。やがてネーム、あるいは漫画原作が完成する。いいのではないか。

最後に、ちょっと思いついたことがある。自動で作画できないか。キャラクターは、どこかで特徴を変数として宣言しておくとか、MagicAnimateなどの技術を用いるとか、工夫が必要かもしれない。Contorolnetのポーズ情報はJSONだから、XMLに埋め込むことだってできる。いや、OpenAIのDALL-E3を使えばそういう小細工すらいらないかもしれない。だって、あいつすげー頭いいんだもん。

そして、漫画ネームをテキストで書けるということは既存の人工知能技術で生成可能ということである。完全に人工知能が書いた漫画ができるのではないか。学習させるサンプルがないだろって?人工知能の学習データを作家を雇用して書かせる例は既にあってだな……

なんてこった、ネーム作業の効率化ができないかと考えていたら漫画生成人工知能に行きついてしまった。おそらく既存の技術で可能だろう。ここまで考えなくても良かった気がする。