昔は結構、思ったことをそのまま口にするタイプだったと思う。小学生までは活発で元気な子だったし、人見知りもしなかった。
中学校から何となく人の目が気になるようになって、徐々に人見知りになっていった。声も前より小さくなった。でもまだ、今よりは思ったことを言うし必要なら目立つこともする勇気があった。
高校。何でもない会話の中に、気になる言葉があった。
「なずーは毒舌だよね」「はっきり言われそうだから相談とかはしたくないかな」
お互いに笑って軽口を言い合う仲の友達。私もその場では何とも思わなかったけど、夜になってその言葉が妙に気になった。毒舌…確かに口は悪いかもしれない。そういえば、私は中学のころから何回か「毒舌」とか「鋭い」とか、「はっきり言うよね」と言われたことがあったっけ。一応、中学からは思ったことをそのまま言いすぎないように、ある程度抑えて話していた。それでも周りからはそういう風に言われてきた。
自分では抑えているつもりだったけど。私、気づかない間に人を傷つけてきたのかも。
その日から、これまで以上に話す言葉に気を付けた。自分だって人から強く言われたり、傷つけられたりするのは嫌だから。人を不快にしない言葉選びをするように意識する毎日を過ごして、気づいたら、家の外でほとんど自分の思ったことを素直に言うことがなくなった。
人見知りなんて昔は全然なかったのに、酷い人見知りになっていた。高校で声が高いことをからかわれたのもあって、家の外だと声も自然と弱弱しいものになってしまう。
大学でも言いたいことは全然言えないし、言わなかった。人を傷つけたくないし、それで自分も傷つきたくない。誰からも嫌われない人なんていない、って理屈はわかるけど敵は少ない方がいい。
就職して、今の自分はとても「舐められやすい人間」なんだと感じた。人見知りで口下手、気弱そうな外見とか細い声。柔らかい言葉でゆっくり話して、自分の意見を言わず、人を否定しないし怒りも表に出さない。
これがまだ仕事ができる人ならともかく、私は新人で要領もかなり悪い。最初は優しく接していた職場の人たちも段々と口調や態度が強くなっていった。本を読んで仕事に関する勉強をしたり、効率を上げるコツを調べたりと自分なりに努力はしたけどダメだった。最終的に体の方にも影響が出始めて、その会社は辞めてしまった。
環境を変えた現在も、私に嫌なことを言ってくる人は何人かいる。私自身が「こいつには何言っても大丈夫」と思わせるような言動をしてしまっているので、私が悪いのだが。ただ、最近はこのままではいけない、自分を変えたいと強く思うようになった。だって、今のままじゃどこに行っても同じことの繰り返しだから。
私は自分の意見を言っていいし、声だって普通に家にいる時みたいにはきはきと出していい。声が高いからなんだ。聞き取りやすくていいじゃんか。時には言われっぱなしでムカつくのだって、「それは不快だ」と伝えていい。私に何の気も使っていない人に、私が配慮する道理はないだろう。何でも笑って許してるわけじゃない。怒ってないわけじゃない。私はそんなに穏やかな人間じゃない。元来、毒舌で鋭い奴だ。
もちろん、会社で怒りを爆発させるとか、癇癪を起こすとか、そんなことはしない。信用を失うことは避けなければならない。でも、冷静に自分の意見を言うぶんには構わないんじゃないだろうか。
私は変わらないといけない。少しずつでも、自分の言いたいことを言えるようにして、普通に声を出せるようになりたい。意識していてもなかなかうまくいっていないのが本当のところだけど、自分の社会生活のためにも諦めずに頑張っていこうと思う。