「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を見ました

nemuitree
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公開:2023/12/1

 話題だったゲ謎、ついに見た。しかも12月1日の映画の日、縁起がいいね。

 何故突然鬼太郎を…?と思われそうだが、私は幼少期の頃、鬼太郎5期を視聴しており鬼太郎にはそれなり愛着はあった。所謂「二次元への初恋」は鬼太郎であったと思う。目隠れだしかっこいいしな。SNSで話題になっていたため気になってはいたが、イマイチ鑑賞への踏ん切りがつかなかった。出不精なのであまり外出は好きではないからである。

 しかし先日、私は「劇場版プリキュアF」を見ようかギリギリまで悩み、そして先日、近場の映画館はついに上映が終了してしまった。今はひたすら後悔の渦に陥っている(自業自得)。「ネトフリやアマプラで出るのを待てば良くね?」とは言うが、やはり映画館で観るのと、家で観るのでは没入感が違う。スクリーンの大きさだとか音響だとか、環境が違うだけで世界観に入り込める感覚がこんなにも変わるのかと、最近(といっても去年の夏だが…)劇場版ONEPIECEフィルムREDで学んだ。要は、観ないで後悔するよりも、観て後悔することを選んだけである。ソラ・ハレワタールさん、本当にごめんね…。

 前置きが長かったが、以下からは「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」のネタバレが含むため、未視聴の方は閲覧非推奨である。それと、当映画は視聴が苦しくなるような描写がワンクッションなしで存在する。特に女性の方は、視聴前にある程度はネタバレ前提で調べることを推奨する。

感想

 私が視聴前に持ち合わせていた情報を予め明記しておく。

【事前から知っていたこと】

・鬼太郎5期で得た情報(幼少期のためかなりうろ覚え)墓場鬼太郎は読んでいないが、存在は知っており1部情報は掻い摘んで知っている

・鬼太郎もといその両親も幽霊族である

・目玉おやじは病におかされ、包帯でグルグル巻かれていた大男である

【TLで流れてきた二次創作から得た情報】

・女性への性加害を含む因習村の話である

・水木と目玉おやじ(人間の姿)は、2人で鬼太郎を子育てしている

 かなりの情報を得てしまっていた。しかし確信に触れるようなネタバレは踏んでいないと判断したため、かなり楽しく鑑賞し始めていた。しかし……。

 こわいよー(ホラー苦手)

 個人的に鬼太郎はそれほどホラーであるという印象は持っていなかったため、あまり警戒していなかった。油断した結果、序盤シーンはかなり鑑賞を後悔した。1人で観に来ていたし…。しかし、ホラーあるあるというべきなのか、真相が明らかになるにつれて恐怖心は薄れていった。やはり「知らない」から「怖い」のであり、「知る」と情が移るのだ。

 全体的に演出が邦画テイストな印象を受けた。なんというか、語彙力のない表現をするとチラズアートのホラゲーみたいな雰囲気だ…。そして、物語は夏であったため作中ではセミの鳴き声が響いており、真冬の暖房が効いた映画館で観るとなんだか変な気分だった。

【水木】

 これは私の無知故であるが、スーツを着て働いている人間が、つい数年前まで戦争に行っていたという情報が上手く飲み込むことができなかった。戦争という狂った環境下に置かれた人間が、現代社会と近しい会社でサラリーマンとして働く、私が知らなかっただけで確かに現実にもいた人たちのことを思うと、少し胸が苦しくなった。

【ゲゲ郎】

 これが令和の和風お兄さんや…(鬼灯様・薬売りさんの系譜を感じた)。色白で、目はギョロっとしており、確かに水木しげる作画だ。身体はがっしりしている大男、しかし和服のおかげかシルエットが随分すっきりしている。最高に良いキャラデザだなと感じた。水木よりも15〜20cm程背が高く、水木を抱えるシーンでは体格差にちょっと萌えた。

 それと、思っていたより倫理観がしっかりしていた。ヘタな人間よりも義理人情に厚く、だからこそ裏切られることも多かったのだと思う。ある意味純粋な魂の持ち主だった。戦争により価値観や倫理観が崩れてしまった水木と、妖怪(のようなもの)であるが故に純粋で素直なゲゲ郎との対比が良かった。

 ゲゲ郎による戦闘シーンは作画が非常に良かった。私は影のない絵で、カメラワークと共にぬるぬると動く戦闘シーンが好きなのだが、正にそれがドンピシャに来て興奮した。しかもゲゲ郎、わりと物理で戦ってて草。クソ強いのに何故幽霊族は狩られたのか…ゲゲ郎が強いだけなのか…。

【因習村の皆さん】

 冒頭の「遺書を読み上げるシーン」本当に1番怖かった。人間の白黒とした視線って怖いな…ホラー演出怖いな…というのも勿論であるのだが、何よりも遺書を読み上げた直後、それまで正座していた故か、人間達が足をもつれさせながらユラユラと立ち上がろうとしてくる描写が心底怖かった。人間の欲望に対する粘着質な情念を感じてしまったのである。

 沙代の真相のあれこれは本当に気持ち悪かった。SNSで問題視され注意喚起されていたのはこのことだろう。直接は描写されていなかったものの、セリフで色濃く示唆されている。しかも近親相姦である。まじできしぇー。最終的には村民全員が死んだようだが、村ぐるみで村の外の人間にまで手を出していたため、同情はできなかった。特にネームド女性キャラ(主に時貞の娘達)は沙代への発言がすげーキツい。「(祖父に)手を出してもらえて名誉でしょ?」「(水木に)もう手を出すなんてさすが龍賀家の女ね〜」など、言葉による精神攻撃では女からの方がきついんじゃねえかなこれ…。

【ラストシーン】

「ツケは払わなくっちゃなァ」

 そう言ってから血まみれで倒れる水木、あまりにも美しかった。あそこで水木が時貞を殺していたら、村を呪い更に怨念を生み出した沙代のように、怨念が怨念を生み出していたのだろう。因習村の負の根源である時貞を殺すのではなく、怨念という負の連鎖を絶った水木の選択は正しかった。

「妻との子供や、水木が生きる未来を、この目で見たい」

 聞いてるか水木!?人を愛する資格も器もないと言っていた男に、1人の強い妖怪がその身を犠牲にしてまでお前らのいる未来を望んだぞ!?これが愛じゃないなら何と呼ぶんだよ!!ここのゲゲ郎があまりにも美しすぎて、私の頬にツーと綺麗な何かが流れた。こ、これが、涙…?

「忘れた、何も思い出せない」

 ゲゲ郎と子育てしてる二次創作全部オタクの妄想じゃねぇかよ!!!!!!!!!→あ、ここから墓場鬼太郎と繋がるんですね……(調べると厳密には違うらしい。今度読んでみようと思う) 鬼太郎を抱き上げる水木を、墓場から見つめるゲゲ郎(目玉おやじ)。見ることができて良かったね、愛する者たちが生きている未来を…。

【総評】

 クソ面白かったワ。正直、沙代が怨霊パワーで村民殺しただけで終わったらどうしよう…と心配になった。そうなったら間違いなくB級ホラーだった。しかし、その後のどんでん返しによって、伏線が丁寧に回収されていっていた。映像も終始綺麗だったし、最終決戦の舞台が血に染まった桜であるのも悪趣味だが映像としては美しかった。

 また、ここからは映画とはあまり関係がなくなるのだが、私はSNSによくいるようなAB(CP名)を好む人間が「Aの夢女子はBには勝てないよねw」とトンチキマウントをとるオタクがまじで嫌いである。とはいえ、他を下げないと自分の好きなものを上げられない程度のオタクであると思っているが、こういう輩はゲゲ郎と、妻と、水木の関係のことをどう思うのだろうか…。

 私はゲゲ郎は、妻と水木で天秤にかけるような奴だとは思わない。例えどちらかを選ばなければならない状況に陥ったとしても、彼は困惑するし、簡単に片方を切り捨てることはないだろう。ゲゲ郎はどちらのことも大切だし、妻と同じぐらい水木のことを愛している奴であると、彼の作当中に描かれたキャラクター像を見て、私はそう捉えた。

 人間の関係は一つだけではなく、恋愛・友情・親愛・名前の無い関係、そのどれもが素晴らしい関係性である。私はそういった関係を私なりの価値観で愛していきたい、そう感じながら観終えた映画であった。今年最後に見る映画かもな〜。