同人誌の話②

neuchimonai
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公開:2024/11/8

2冊目の同人誌の話をします。南雲と赤尾について基本CPにはならない(萌える...)という主義のオタクですが今回は心意気はリオナグです。例によって恋愛関係にも肉体関係にも一切発展しないものの最近はもう魂の話をしています。

9/1にインテで発行予定でしたが、台風で参加を見合わせたのでイベント持ち込みは10/27のスパークになりました。また、通販で先にご購入いただいた方には9/1発行の同人誌が10/1以降に届くという意味不明な遅延をお知らせする事態になり大変申し訳ございませんでした。ほぼ私が悪いです。


以下、描きながら考えていたことです。

タイトルは元々1冊目の同人誌(短編集)に入れたかった南雲と赤尾の話につけていたものでした。学生時代の2人が雨宿りにクラブに行く話を考えていたので「ミラーボール」という単語を合わせましたが、真夜中の太陽でも、瞼の裏側に張り付いた流星でも、そういう存在であれば良いという感じです。前回間に合わなかったので、手直しして仕上げようとしていたところに本誌で物語が進み、赤尾リオンと有月憬の過去が明かされ、最高すぎて三日三晩寝込んだので全然別の話になりました。よってあまり内容との具体的な親和性は無い...無いのですが、自然物ではないのが今回の話には合っていたかなと思っています。そういうことで話を進めます。

注意書きとして”本編一巡後妄想”と書きましたが、ざっくり言うと【絶対に無い世界線】という感じの、夢…!!!みたいな話です。めちゃくちゃ楽しく描きました。南雲が赤尾のことをずっと大切に思っているように、赤尾にとっても南雲が永遠におかしな友達であってくれよという願いを込めました。これは1冊目の奥付けに書いたこととほぼ同じです、壊れたラジオのように同じことをこの1年言い続けている。ただ、南雲と赤尾の関係をきれいな友情話にするつもりも毛頭なく、読後になんとなくモヤっとされた方がいらっしゃいましたら、そのモヤっとした感じで合っています。変なものを読ませてすみません。これについては後述します。

赤尾の、無邪気な少女のような側面を今回特に描けたらいいなと思っていました。最高にクールな戦闘アクションとスタイル・ヘビースモーカー・情に厚くマイペース…とメロ要素満載キャラですが、10代の等身大っぽいセリフやコロコロ変わる表情が超可愛いくてアッパーをくらったオタクなので、その可憐さを描きたい気持ちがありました。

赤尾のことを、基本的に他者に共感ができる人で、その上で自分の中の明確なルールで生きており、人殺しを生業にしようとしている自分にも、同じスタイルの他人にも厳しい人なのかなと思っています。なので、そのルール外の、心根の優しくいたいけな相手には本来の彼女の優しさや慈愛が惜しみなく注がれる。南雲は赤尾のことをデリカシー皆無と評していたけど、あくまでベースがそうなだけであって、有月への接し方を見ているともっと階層が深くあると思えたので、単純に線引きが明確なのかなと思いました。(有月の"赤尾リオン"の人格の再現度を南雲が認めているので、有月の前でもまぁデリカシーは無かったんだろうな...と思います)

よって、「有月の記憶の赤尾リオン」と「南雲の記憶の赤尾リオン」はおそらく別の姿をしているはず、という部分にすさまじい萌えを感じています。赤尾は有月には一緒に寝ようと言いそうだけど、南雲には多分言わないし、そういう差異を突きつけられるのって結構キツい、キツくないですか。仲の良い友達でも私の知らない顔は当然あって、理解はできるのに、いざそれを目の当たりするとショックだったりする。個人的にはそういうショックはある意味快感なのですが、南雲は赤尾という十字架を長い間ぶら下げすぎているので、彼女のそのような多面性を許容しにくいんじゃないかなと思ったりします。

あと、個人的にかなりゾクっとしている部分なのですが、17歳前後のままの赤尾と27歳の南雲が有月を通して普通に会話を始めるのが、結構ヤバいなと思っています。坂本は天然が強めなのであまり違和感がないですが、南雲がこの10年赤尾のために費やしてきた時間の厚みを知っているこちらはゾ...ッと背筋が冷える瞬間があり、最高です。本当に10年ずっと変われなかった南雲が哀れで美しくて大好きです。

南雲については今回、さしたる人生の目標や旨みも無く生きるより、他者に自分の生きる意味を仮託して盲目的に信仰し続ける方があの世界をサバイブしやすかった=赤尾への執着が年月を経てそういうものとなる可能性がなかったか、という考え方をしました。

サッカーのユーロの試合などを見ていると欧米の選手はPKを蹴る前によく十字を切っているのですが、彼らはシュートを外しても自分のせいだとはあまり思わないそうです。結果は神の決めることであって、自分の技量のせいだとは思わない。真実か定かでないですが、そういうストレスを「自分ではどうにもならないこと」としてしまうことで、負荷を減らすのは結構クレバーだなと思っていました。宗教というのはおしなべてそういう役割があると思いますが、南雲の10年に及ぶ信仰対象はまさしく赤尾だったと勝手に思っているので、そういうことです(?)

南雲が時間と大金を注ぎ込み、他者の人生を踏み荒らしてでも赤尾の汚名を濯ぐために奔走し続けたことは、ある意味十字を切るような行為だったのかもな〜という切り取り方でした。他者への献身には違いないけど、そうすることで自分を許し生かす理由にもなる。南雲の赤尾へのやや過剰に見える執念に対して、この理由付けが当時自分の中で結構しっくり来ていたので、夢ブチ込みセットにしめしめと上乗せしたという感じです。

その祠を赤尾がブチ壊してくれたらうれしいし、たぶん赤尾にしか解けない呪いなので、頼みます...という願いと、永遠に死ぬまで解けない呪いであってほしい...という祈りを同時に込めてしまっているので、ただでさえ分かりにくい話が、もう何なんだこの話は…というところに着地してしまいました。最後のページのセリフを「さ、ここからが地獄のはじまりだ」として描き始めたものの、歪みが強すぎるかなと修正したりしていて、そういうどっちつかずなものが端々に出てしまっていると思います。手を離したいのか、離す気がないのか、どちらか1本に絞るか悩みましたが、そういうのらりくらりとした2人であってほしい気持ちが強かったのでそのまま印刷しました。

あとは、もう単純に南雲と赤尾がダチをやってるのが見たい!!!というストレートな欲望にまみれた話でもあります。一緒に平然と寝たり10時間くらいだらだらゲームしたり街を歩いたりしてほしい。見たかったので何の整合性もなく描きました。ただ前述のとおり【絶対に無い世界線】だと確信を持っているので自由に妄想できたところがあります。泣きながら夢を見ている。

有月については、彼の経歴や境遇に見合わない天性の素直さや善性、元を辿れば品の良さに由来しそうな天然気質が大好きなのでそういう部分を描いたつもりです。南雲は感じは良いけど品はそこまで良くない人かなと思っているので、有月の裏表のない優しさや気遣いが南雲の神経を逆撫ですることはめちゃくちゃありそう。あってほしい。有月も赤尾のことを自分よりずっと大切な存在だと思って行動しているように描きたかったです。作中で一番わけのわからんことになっているキャラなので、可能性は低そうだけどなんとか生き延びてほしい。


ひたすら好きなものを好きなだけ描いたので謎の充足感がありますが、同人誌として良いものになったかどうかはまったく自信がありません。発行後は不安を少しでも中和するために、どうか楽しんでもらえますようにと毎晩お祈りをして寝ています。お祈りは誰でも出来るのでやった方が良い。

しばらく東京のイベントは参加予定がないですが、来年は台風で断念した大阪インテのリベンジをしたいなと思っています。その頃にはもうアニメが始まっていて、楽しみすぎる、毎日が日曜日、そんな浮かれ気分で参加する予定です、今回の本も何かしらの形でまた頒布できればと思います。

以上、ありがとうございました。