今年は、日々スープを食べていた。多忙な家族が栄養をとれたらいいなと思ったのがきっかけだ。家族は、飲み会や外食が続いていて、塩分が多くなりそうだ。インスタントのスープは、意外と塩分が高いと聞く。鍋を火にかけることは家族の負担にならなさそうだった（とてもすごい）から、野菜の入った朝食のスープを、前の晩に作ることにした。
実は、スープはおろか、みそ汁を食べる習慣も私には無かった。そんなにネタをもっていないのだ。毎日は無理だと思って、2日で食べ切れる量を目安に作った。
味噌汁は、お味噌やお出汁でバリエーションを無限に組めた。私の趣味は旅先で調味料を買うことなので、いろいろ試した。家族が遠方で仕事をする時に、この地方の調味料を買ってきて！！とお土産をお願いした。
雪の降るところのお味噌は、しょっぱくて色が濃くて大豆の香りがしっかりする。南や西のお味噌は、甘くて比較的色が薄くて麦がごろごろ入っている。沖縄までいくと、また色が濃くなる。複数の味噌を使い分けるのは面倒だからしないけれど、この系統の味噌に、どの出汁を合わせよう？と試行錯誤するのは楽しかった。
ちゃんと出汁をひくと、面倒になりそうだったから割愛した。だし粉を入れたり、だしパックや顆粒だしをいれることが多かった。発酵食品だから体に良いだろうと、けずり節をそのまま放り込んだりした。椎茸はギュムッとした食感が苦手だから使わなかったけど、使えたら楽しいんだろうな。安売りしていた椎茸パウダーを使った時は味に深みが出て美味しかった。鍋の日は、お肉やお魚の旨味がよく出たスープストックがあったから、重宝した。
私にとってのベストな組み合わせのお味噌汁は、愛媛の伊予味噌と削り粉の組み合わせだった。四国は、いりこだしも最高だったな。
削り粉を盛ると、濃厚つけ麺ライクなどろどろの質感が出来上がった。ストロング味噌汁と名付けて、健康的に背徳感を味わいたい時に作った。
味噌汁ばかりでは飽きるので、スープも作った。コンソメを使わない味付けは、結構難しかった。コンソメって味が一発で決まるね、コンソメはすごい。味が完成してて、外さない。でも、同じ味になってしまうから、コンソメスープ以外も作ろうとトライした。これが1番難しかった。
塩分ひかえめで美味しいスープを目標にしてたから、塩が濃すぎた時は調整に困った。旨味が強いか、塩味が強いか、一口ずつ味見してコンソメを足してと繰り返していた。ソースを足して異様な味になって、鍋を放り出したくなることもあったな。
激安スーパーの顆粒の貝だしは、使いやすかった。コンソメじゃないってだけで、何か工夫できた気持ちになる。私は塩味のスープがそもそも得意ではないから、どんなスープが美味しいかよく知らない。中華スープも得意ではないから、鶏ガラスープもあんまり使ったことがなかった。自分の作れる範囲を広げるために、試行錯誤した。同じものばかり出していたら、私も家族も飽きてしまうと思った。
スープの具材は、スーパーの野菜売り場の価格変動と直結した。今年は、野菜が本当に高くてスーパーに行く度に胸がキュッとなった。きのこまで値上がったときには、どうしようかと思った。少し前くらいが1番高かったけど、あのころ何の野菜を食べていたんだろうな。スーパーを何店舗か回って、安くてアレンジの効きそうな食材を考えながら買い物するのが、結構しんどかった。また正月に向けて価格が上がり始めるのが怖いな。
最後に、上手くいったラッキーをいくつか書いておこう。あら汁にハマって、作り続けた時期があった。鮭の切り落としに塩をふって置いておいて、湯をかけて、骨を取る作業が楽しい時期もあった。日本酒や生姜を入れれば、華やかさも増した。手間暇かかってやや面倒だけれど、やった分だけ美味しいなと思えるのが鮭のあら汁だった。粕汁もやってみたいな。
蕪が安かった日に、豆乳ポタージュを作った。ポタージュも満足度が高い。ポタージュを家で作れると思うと、視界の開けた感じがする。今までポタージュは買うものだったけれど、意外と家で作れるなと思った。
電気圧力鍋で下茹した時の茹で汁でスープを作った日も、満足度が高かった。あらかじめスパイスの溶け込んでいる茹で汁に、味付けするのが楽しかった。鶏や豚を煮て１品、その茹で汁でもう１品作ると、素材を上手く使えた感があってうれしい。にんにくと生姜でお肉を茹でたあとには、汗が噴き出すくらい温まるスープが出来た。フォーを入れてもいいかもしれない。冬のうちにまたやりたい。
なんやかんや、ストイックになりすぎた気はするけれど、レシピのレパートリーを広げられたように思う。家族から「おいしい」「あたたまる」と言ってもらえるのがうれしかった。いま、短期的にかたちになることを何もしていないから、少しでも成果の見えることが欲しかった。調子に乗って作り続けて、ぐったりして、また食べたくなって調べて作る。その繰り返しだった。
おせっかいではじめたスープ作りは、今年頑張ったことのひとつかも知れない。