スーパーで、翌日の晩御飯を楽にしたくて、魚を買うことにした。何かに漬けて焼けば、割とコスパよく、手間も少なく、自炊できた達成感も、健康に良さそうなものを選択できた満足感も得られる。
珍しく、さわらが売っていた。私の暮らしてきたエリアでは、あまり出てくることが無かったが、家族の暮らしてきたエリアでは、しばしば出る魚らしい。給食くらいでしか食べたことは無かったけれど、なんとなく惹かれて手に取った。いろいろ楽しようと思って魚にしたけれど、想像できないものをつくった方が面白いから、楽は二の次にした。
家族と帰り道に相談しながら、粕漬けにすることにした。家に月末で期限の切れる酒粕がどっさりあったこと、西京味噌が無かったことに拠る。粕漬けなんて作ったことはなかったから、初めて作るものにわくわくし始めた。
粕床(かすどこ)のレシピを探す。粕床をつくって1日寝かせて、また1日魚を漬けるレシピは見送った。美味しそうだけど、私は明日の晩御飯を一応楽にしたい。即席の粕床に、1日漬けるレシピを採用する。
ビニール袋に、酒粕と味噌と酒と砂糖を入れて練る。減塩味噌しか生憎なかったので、塩気が染みることを祈る。ダメなら卓上調味しようかな。練りすぎて、ビニール袋に穴が開く。ビニール袋を二重にする。
さわらの切り身に、粕床をしっかり塗る。要領がよくわからない。青く光ってよく張った皮や、白い身に塗っていく。空気を抜いて、冷蔵庫にしまう。粕床を洗い流した自分の手が、こころなしかふっくらしていた。杜氏の手は、日本酒の作用で美しいという話を思い出す。ちょっと気分も良くなって、下準備を終える。
夕方、冷蔵庫から取り出す。ビニール袋を開けると、奈良漬けのにおいがする。酒粕につけてるもんな。粕床を、指でさわらからこそぎ取っていく。昨日はよく張っていた皮にしわが出来、光も鈍くなっている。水分ってこんなに失われるのか。
フライパンでよく焼く。魚用のアルミホイルを敷き、粕がこげつかないように火が強くなりすぎないようによく見る。手間をかけたし、初めての料理なので、いつの間にか愛着がわいている。
ひとくち食べると、酒が強く残っている。塩味より、焦げより、酒のかおりが鼻に抜ける。お弁当には入れられなさそうだ。もう少し塩を強くしたらもっといい感じになるかな、焼く前にもう少し拭っても良かったかな、違う酒粕にしたら香りが変わるのかな、と次に向けてわくわくする。
月末が期限の粕をどう使おうかな、と頭を巡らせる。