最近は殆ど家から出ずにぼうっと毎日過ごしている。
この部屋で春を待つー、と口ずさんでいたが外にはもう春が来ていた。
家の前の桜が咲き始めている事にようやく気付き、ほんの少し精神がざらつく感覚と共に春を感じている。
散歩が好きだった、いや厳密には実家が嫌いだったといった方が正しいか。
しかし関西に引っ越してからというもの、あまり散歩をしなくなってしまった。
その所為か、住んでもうそろそろ2年くらい経つはずなのに、まるで土地勘がない。
地元にいた頃は、この季節になると毎日のように多摩川沿いをひたすら歩いていた。
とにかく何処かへ逃げたかったのだと思う。
物理的な距離を置く事でしか現実逃避をする方法が分からないのは今も同じだが。
強迫観念に近い動機だが、その時間が本当に大好きで。
音楽を聴きながら、脳内で妄想を繰り広げまくるだけの時間に救われていた。
ある真冬の日に突然、遠くへ行きたいという感情が暴走して、また歩き続けていた。
いつの間にか私は二つ隣の街にある駅のベンチに腰かけていた。
温かい飲み物を買う小銭すらなく、携帯の電池も残り少ない。
脳内は忙しないから景色は二の次で、どうやって来たのかもイマイチ分からない。あれは流石に命の危険を感じた。
春が訪れるたびに、あの川沿いの散歩道が恋しくなる。
我に返るスキマを埋メタイ。