「そういえばのび太は、お手伝いの項目としてよく草むしりをしてたなあ」とかいうことを思い出していた。 軍手をはめて、草を根からぶちぶちと抜いていく。こんな「ザ・草むしり」をしたのは初めてのような気がする。実家はベランダだったし、その後のアパート暮らしでも島の一軒家でも庭という庭はなかったし。草刈りはいくらでもしてるけど、手で「むしる」というのは初めて。まあ草むしりをし始めたものの、庭はさほど荒れてはないし、雑草が生えっぱなしでも問題はない。でもわたしは昔からきれいに整った家の庭を外から眺めるのがとても好きで、住んでみたいという憧れみたいなものもあった。だから今回、謎の好奇心のもとできる限り整備してみようと思った。道具を使いつつ、砂利やコンクリートの隙間からたくましく生えた雑草たちを引っこ抜いていった。そういえば、今日は仕事でも雑草をよく観察した日だったな。いや、雑草を観察する仕事ってわけではなく、島に行ったんだけど今日は人になかなか遭遇しなかったから、道中の雑草をまじまじと眺めてて。雑草の美しさにうっとりしていたんだよな。それで「タチイヌノフグリ」とか「トウダイグサ」の名前を覚えた。そんな、道端に生えてる雑草を見ながら家の庭のことを思い出していて、別に除草しなくてもいいか、という気持ちになったんだった。そんなことも思い出しながらも、わたしは結局草むしりした。
それは、なんか土をいじったり草をむしったり、「整える」ことに割いてる時間が心地よかったからなんだよな。散歩してるときみたいに、もくもくと手を動かしてると自分が空っぽになっていくようで楽しいし気持ちがよい。
雑草たちはここで生きようと根を張ったのに、突如住み始めた人間の手でぶちぶちと引き抜かれていく。かたやその人間は、道端に生えてる雑草たちをきれいだと言って慈しんでいる。たまに、花瓶に生けたりもする。なんだかすごく恐ろしいことをしている気がするよ。