◆「相剋は美なり――」 私は戦前の日本の芸術家の心を愛する。

人魚
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荻原守衛「愛は芸術なり 相剋は美なり」

相克は美なり、は、良く解る。

竹橋の近代美術館で、常設展の彫刻の、戦前の作品が並ぶ中、何の知識もない時に、守衛の「女」の前で動けなくなった。

あのポーズに秘密がある。

優れたものには必ず論理があり、そしてそのロジカルを支えるのは情熱であり、情熱の源は情感に他ならない。その情感とは、つまり愛情を感じる対象が生み出す情熱で、だからこそ論理を尽くして最高の作品となるよう心を傾けるのだろうか。

実際のモデルが黒光かどうかではなく、黒光が内に持っていたものを具現化したという意味ではモデルに他ならないはず。

ウエスタン・インパクト。

あの時代の、特に芸術家の、見果てぬ西洋への思いを考えると、複雑ながらも息詰まるような気持ちになる。

黒光への恋も、西洋への憧れも、自分もそこへ到達したいという激しい欲求、願い、希望か。

田中恭吉がサアニンを一晩で読み、感激して絵をたくさん描いたという日記の初々しさよ。

本郷の家の、古い方の二階で、雪の夜、しんとしたなか、与謝野晶子の歌集を読んでいたら、表を火の用心の拍子木が歩いて行った。戦前は、こんな風に寒くて静かで、火の用心が来たにちがいない。そんな中で晶子がこれらの歌を詠んだかと思った一瞬の感激。高校生の冬。大雪降って、半ドンとなり、川越まで帰らず本郷に泊まった夜。

愛しき場は忘却の彼方だ。

今日はもう、これで、歳時記の予約投稿してSNSは離れよう。寝る前に、投稿うまくいったか見るだけ。

@ningyo
ここは苔むす美しい池――椿野人魚。