20231123 クリスマスを憶う

nishiray
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先日のリベンジでクリスマスツリーを買いに出掛けた。やっぱり、どれもこれも光る。別に光らなくてもいいのに……。

クリスマスの時期になる度に、実家の外壁にささやかなイルミネーションを飾ってくれた親に「電気代が勿体無いからやめよう」と泣いて訴えたことを思い出す。まさか母もそんなことで幼稚園児に号泣されるとは思わなかっただろう。

あまりに泣くのでイルミネーションは仕舞い込まれたが、それでも母は大きなクリスマスツリーを飾り、毎年ケーキを買ってくれた。小学3年生のクリスマスイブに「サンタさんは、本当はお父さんとお母さんですか?」と手紙を書くと、翌朝枕元に「そうですよ。でも、弟たちにはまだ秘密ね」と返事があった。母の書く字は、丸くて可愛い。

昨年のクリスマスに、祖母が亡くなった。母は、自分の母の死を、娘の私に電話で告げた。

クリスチャンの祖母の葬式は、教会で行なわれた。田舎に遊びに来るのは夏休みばかりだったので、雪景色の教会を初めて見た気がする。東京から履いていったローファーで凍った道を歩くと滑った。

暖かくなった頃、納骨のために再度訪れた母の実家で、古いアルバムを見た。私たち兄弟の写真も、母が学生の頃の写真も、祖母の部屋に一緒に仕舞われていた。その中に挟まれた手作りのクリスマスカードを見つけた母が、懐かしそうに「こういうの、好きだったんだよ」と言った。クリスマス会を主催して、参加者一人ひとりにカードをプレゼントしたらしい。宛名は母の名前だったので、自分の分も作ったんだな。母の書く字は、アルファベットも丸くて可愛い。

イルミネーションを嫌い泣いていた私も、捻くれていた心が解け、季節の行事を素直に楽しめるおとなになった。この気持ちの根源は、きっと母がめげずに飾り付けた大きなツリーや、サンタさんからの秘密の手紙にあるんだろうと思う。そしてその母もまた、あのお喋りで心配性な祖母から受けた影響があるのかもしれない。

理想のツリーは見つからなかったので、大きなスワッグと、小さなスノードームを買った。ここから私のクリスマスを作り上げていく。浮かれていこう、12月に向けて。