公園からの帰り道、子猫のようにふんふんと鼻を動かしながら「なんだかいいにおいがするねえ」というので、私も真似してふんふんとしたあと「これはたしかに、いいにおいだねえ」と返した。いいにおいがどこから来てるか探してみようかというと、娘の瞳から弾けるような光が溢れた。
角を曲がるたび慎重にあたりを見渡す娘の、半歩うしろをついていく。時計を見ると16時、カラカラと自転車の音が聞こえた。秋の空は天高い。進む道にはところどころ西日が差している。遠くに、庭からひょっこり頭を出す金木犀が見えていた。
(10月頃のはなし)