元気なおばあちゃんに会いたい、と思った。
思い出すのは、ねんねんこの子守歌。胸元をとんとんされながら聴くおばあちゃんの声。
思い出すのは、かけざんを呪文のように唱えながら歩いた道。九九を最後まで言うと「かっこいねえ」とほめてくれる。
思い出すのは、スーパーで買ってもらったお菓子。これはおじいさんが好きだったんよ、と教えてもらった黄金糖。
思い出すのは、町の本屋さん。漫画でもええんよ、好きなもの選びんさい、と重ねた本の束。なんで私、売ってしまったんだろ。
思い出すのは、けんかをしていたあの日。おばあちゃんは毎日朝家に来て、母の手伝いをしてくれてた。仲直りしたくて肩を揉んだら「やめてやめて」と笑ってくれた。
思い出すのは、もっと大げんかをしてしまったあの日。娘が産まれて、私はいつも何か溢れてしまいそうで、何もかもがいやで、母のことももおばあちゃんもいやで、ひとりでうまくやりたくて、娘のことで口を出されるのがとにかくいやで、遊びに行ってあげてるのに、なんてひどく傲慢で、信じられないくらい子どもでした。
あなたが床に伏せてしまうまえに、気づかなければいけないことが山のようにあって、私は後悔ばかりで、過去のきらきらと輝いていたことを思い出しては、ばかだなあと思うのです。