記憶を消し、二度と触りたくない『賢者の選択』

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【※注意※】

 以下にはシナリオ『賢者の選択』のエンディングのうち【3ルート分】のネタバレがございます。

 自分でやりたい、って方はやってからまた来てね。

【OK?】

 はい。

 というわけで、いろんなシナリオをプレイしてはいるし、一個一個書いていきたいところですが、書きたいやつから書く。

 というか、【これに関しては書いて一刻も速く忘れたい】ので、頭からとっとと出させていただきたい。

 これを見ているあなた。

 『記憶を消してもう一度見たい』と思うものはありますでしょうか?

 僕には……パッと思い付くものが無いですが。

 まぁ、思ったことがある人は思ったことがあるとしましょう。

 しかしながら、この世にはその逆の考えもあったりしなくもないだろうか?

 『記憶を消して、二度と触れないでおきたい』

 人生経験上とかではなく、作品とかで考えたときに出構わないのですが、『できることなら忘れたい』と思った作品はないですか?

 はい。……僕はこのシナリオです。

 これは決して、このシナリオが僕に合わなかったとか、好みじゃないとかそういう話ではない。

 完成度が高すぎるからこそ、思うことがありすぎてというのと、これは自業自得なのですが、自分のキャラクターへの解釈が明確に牙を持ってしまったパターンだったんですよね。

 解釈違いと言うわけではなく、「自分の脳内にあるキャラクターに合致した行動」を取られてしまったから、ダメージが半端なかったのです。

 はい、勝手に自分の脳内にしかないアホ妄想で勝手に傷ついた馬鹿なんですよ。

 本当にシナリオとしては「ああ、TRPG好きな人が作った如何にもな話だな」っていうくらい、ドロッドロで薄ら暗くて、ファンタジーなのに妙にリアルという面を抱えてすべてが後味悪く終わっていく様は「完成度たけーなオイ」以外の言葉が出ることはない。

 特にそれが地雷だったとか(そもそも、地雷が何なのかわからないレベルに地雷がない。)でもなんでもない。

 前述のとおり、自分のアホ妄想にただやられただけなのである。

 一周目のプレイでは、『ボスであるディマデュオに挑むも倒されて、カナン王に助けられて、気がついたら村の外に放り出されて、通りがかった人に助けられて帰還していた。夢だったのかそうじゃなかったのか分からない』というエンドだった。

 ぶっちゃけ、これが一番幸せなのでは?

 というエンディングだったのである。

 

 今となっては、これで満足していれば。

 そんな後悔しかないレベルに後悔してる。

 事の起こりは、ある程度レベルも上がり、スキルも揃えてそれなりに強くなってきたときのこと。

 この時、僕のPTにはとあるシナリオで【聖剣】を手にしたキャラクターがおり、

 ふと、こんなふうに思ったのである。

『そういや、カナン王の魔剣ってカナンがディマデュオ殺すために回収したんだっけ』

 と。

 なんと、あのシナリオで手に入る隠者の杖も魔剣も何も入手しないで来たのである(なんなら、ゴブリンの洞窟の杖も回収を忘れたレベルである。くたばれ!)。

 そして、僕はこんな考えを持った。

『聖剣があるなら、魔剣も欲しくないか? ついでに別ルートのエンディングを見よう』

 ………僕はこの軽い気持ちで、【鬱エンドしか存在しない】と言われているシナリオに手を付けたのである。

 どうなったかはご想像に固くない、というか、もう前述で散々葬式のようなムードとタイトルをご披露しまくったからお分かりだろう。

 

 大☆後☆悔

 触らぬ神に祟りなし、とはまさにこのことだろう。

 僕は、ディマデュオを殺さずに、カナン王を命からがら倒したのである。

 何が起こったか………。

 僕の冒険者たちは、カナン王の閉じ込められていた場所にディマデュオによって閉じ込められ、二度と陽の光を見ることなくそこで生涯の幕を閉じましたとさ。

 …………ちょっと考えれば、想像に固くないエンディングだった。

 そう考えたら、その結末自体にあまりダメージはなかった。納得もしたし、それはそうだよな、で済んで終わった。

 じゃあ、何がショックだったのか。

 さきほど、自分のキャラクターの解釈の話をした。

 それが一番、頭の中に突き刺さった話なのだ。

 僕には今も、そのキャラクターが発した言葉のテキストが現れたときの画面がはっきりと思い出せるくらいにトラウマになっている。

 もうどのような手を駆使しても開くことのない入口に向かって

 『開けてくれ』

 と叫ぶテキストが後悔を呼んで止まない。

 結果的にそのキャラクターはそのエンディングを辿らず、活躍をしているのだが……そのエンディングを迎えた世界線の彼は、失意と絶望に飲まれて死んでいったのだと思うと辛かった。

 普段はここまで思わない。

 言ったキャラクターがダメだった。

 彼に合いすぎていた。合いすぎていたから、ダメージが凄かった。

 そのキャラクターとは『ルッツ』という名前で、今書いている一次創作の小説に登場する、比較的冷静沈着ながら戦闘もこなせるといった策士・参謀タイプのキャラクターである。

 現状書いている小説の段階からはあまり見えてこないが、元々はかなり自由人で面白いことをやりたくなる気質……があるといった設定のキャラクターで、その面を考慮してCardWirthの世界につれてきた。

 本編では自由な立場ではまったくないのもあって、自由な旅ができる場所に……というところから、【人間のクズの塊のようなやつにその自由を奪われて、嘆き叫ぶ】姿を見せられる……というのはかなり堪えた。

 しかも、シナリオ上、口調などが敬語を使ってない冒険者なので、『小説本編では敬語や謙譲語一徹のキャラクター』が、全く普通の口調で叫んでいる様を見た、というのが僕の視点である。その口調に対して、どんな想像・解釈をしたのかは………恐らくご想像のとおりだろう。

 もしかしたら、そういうフェチがある人は気にしないのかもしれないし、むしろ喜ぶかもしれないが………一言で言おう、僕には無理でした。

 『こんなに心に影響与えてくるのは素晴らしいシナリオだ』という心と『辛すぎて無理』という気持ちがごちゃ混ぜになって、反しすぎて頭痛を起こしてくるレベルなのだ。

 実際、これを書いている今もこの2つが頭の中でものすごく戦っており、ひどい頭痛の中で書いているレベルだったりする。

 カナン王を頑張って倒して見るほどのものだったのか?

 正直な話、一生答えが出ない話だと思っている。

 

 その後は………

 ディマデュオもカナン王も亡き者にしました。

 あまりにもそのエンドは虚しすぎた。

 さて、こんな話をした後のことなので、最終的に『カナンの魔剣』はどうしたのかというと。

 要るかよ!!! こんなもん!!!

 その一言に限る。

 ついでに、隠者も持っておきたくないのでスルーしました。

 一生眠ってろ。