私は私でたくさん考えてて、でも何を考えてるのか分からなくなって、自分が本当に悩んでいるのか、それとも悩んでいるフリをしているのかよく分からなくなってくる。「私は、悩んでいるフリをしているだけなのかもしれない」という意識がある分、私って少し大人なのかもしれない、なんて。
杉山先輩は私のことをかわいいという。前髪を切ってくれたのも褒めてくれるし、
私、今人生で一番幸せかも知れない。
山下さん、実際に会ったら芽衣と呼ぶんだけど、未だに自分の中で呼び捨てがしっくり来なくて、頭の中ではずっと山下さんは山下さんのままだ。
下の名前で呼んで欲しいらしい。その方がカップルって感じだし、手を繋いで下校しているのに堅苦しい呼び方はおかしいんだって。
山下さんは可愛い、と思う。僕なんかには勿体ないと思うけど、時々、山下さんが見ているのは僕じゃなくて、僕の身長とか、僕の鞄とか、バスケ部のジャージとか、そういうものが好きなんじゃないかなって気がする。
可愛い、って言って欲しいんだろうなと思う。そりゃ可愛いことには変わりないんだけど、なんというか、僕が伝える可愛いはどれほどの質量を持っていて、それが山下さんにどれほど伝わるものなのかよく分からない。