私とマルチと宗教と母の話

中村
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以前に少しだけ触れたが、私の母はマルチをやっていた。正確には現在もやっている上それに父も加わって悪夢のドリームタッグが結成されているのだが、最近新しい事実が判明したので思い出話ついでにそれも書いていこうと思う。

これは不幸自慢でもなんでもなく、ただ過去の思い出話と思ったことを書き連ねただけのものである。批判をする意図は含まれているかもしれないが、それはあくまで私の個人的感想であり問題提起のつもりはない。

つまりはマルチと宗教にハマった親に育てられた私の人生の切り売りである。別に切り売りをしたからと言って金になるわけでもなんでもないので、チラシの裏の落書きとして読んで頂きたい。

幼い頃、私は公営団地に住んでいた。

一つ上の階に住んでいた幼馴染のH君の母はAムウェイをしていた。我が家にはAムウェイの鍋と電磁調理器があったし、洗剤も使用していたしビタミン剤を飲まされていた。これが私とマルチの出会いである。よくよく思い返してみればH君のお母さんからすれば良いカモだったのではないだろうか。これだけAムウェイの商品を使っていたのだから。

我が家は(恐らく)Aムウェイはしていなかったと思う。しかし母親はどこから知ったのかSミットなるマルチに手を出した。確か小学校に上がったあたりではないだろうか。

製品は基本的に美容関連のものが多く、A4サイズくらいあるクソでかい美顔器やら補正下着やら空気圧で脚がスリムになる機械やら化粧品やらだった。

効果のほどは知らないし、先ほどサイトを見ても値段が書かれていなかったので正確にいくらかはわからないが確かクソデカ美顔器などは二桁万円くらいしていた記憶がある。あとサイトを見たら水素発生器を扱っていた。お前もか。

気づけば家にはSミットの商品が増えていたし、学校から帰るとどこで知り合ったのかわからない女性と話をしながら商品を売り込んでいる、という日がかなり多くあった。

そして同時期に、何かの宗教にもハマっていた。タンスの上にある仏壇に向かって毎朝般若心経を唱えるということをさせられていたので、仏教系の宗教なのだろう。何の効果があったのかは知らないし般若心経もほぼ覚えていない。今となっては歯医者で恐ろしくたまらない時に心を落ち着かせるために覚えている箇所を唱えるくらいである。ちなみに祖母の葬式を見る限り真言宗のようだった。その祖母も昔はS価に入っていたらしい。別に葬式はS価式ではなかったので多分やめたのだろう。

これは私の想像に過ぎないが、宗教に入信している人と交友関係を築き、そこでSミットの話をして商品を売っていたのではないかと思う。私が小学校四年に上がる頃にはSミットの売り上げが公営団地の収入基準を上回り、引越しをしなければならなくなったため、そこそこ売れていたか下にメンバーが出来ていたのだろう。ホテルでSミットの会員達が集まるイベントでイーグル会員になったとかで祝福されていた。よくわからないうちに有限会社を設立していたくらいである。

更に母親の知り合いの自爆営業で我が家には無料でS教新聞が届いていたので、その辺りとも持ちつ持たれつしてたのではないかと思う。私はその新聞がアレであることを知りながら、たまにコラム欄や四コマなどを眺めていた。あの新聞の全ての記事を読んだわけではないが、とりあえず一面には会長がどこかの大学やら国の何とかという役職をもらいました!と毎日のように報じられていたし、四コマはS価を信じてれば救われるのよ!みたいなオチばかりでつまらなかったし、コラムは熱心に親鸞を批判していてそれだけが唯一面白かった。地域新聞社勤めの友人に聞いたところ、最近は夕刊が廃止されアプリに力を入れるようになったと言っていたがあの新聞はどうなのだろうか。

その後母親は手かざし教と呼ばれるうちの一つに知らないうちに入信しており、手をかざして念じると病気が治る!と息巻いていた。私も説明会に無理矢理連れていかれ死ぬほど興味のない話を聞いていたが、途中で飽きて体調が悪いと言って別室で寝かせてもらった。なので話はほぼ覚えていないが、因幡の白兎が鮫に皮を剥がれた後神様が手かざしで皮を治した、といった逸話をされたことだけは覚えている。ちゃんと日本書紀読んでないんだな…と思ったからだ。

手かざし教では瓶の中に食パンのかけらを詰めたものを二つ渡され、毎日手かざしをしたもの、何もしなかったものの変化を見るという謎の実験をさせられるのだが手かざしをしたものはカビていない!と母親が熱弁していた。あとは仏壇に線香をあげる際、手かざしの真言的なものを唱えると線香の煙が中に吸い込まれていく、といっていたがなんか…仏壇は普段から閉じているから内部の温度差とかなんじゃないかと思う。

あとは何やら首飾りのようなものを渡され、お御魂と呼ばれるそれを常に身につけているよう指示されるのだが普通に気持ち悪かったので私は身につけずにタンスに放置していた。中を開けてみたが紙切れが入っていたような記憶がある。

朝起きると母親が布団(Sミット製の電磁波だか何だかが出るもの、恐らくこれも高い)のそばで手をかざして真言を唱えていて、毎日朝からとても不快だった。

現在の私が宗教やスピリチュアルなどにいい思いを抱いていないのは確実にこの辺りの経験が影響していると思う。もちろんマルチにもいい感情は抱いていない。

この辺りまでは父親も「母親がうるさいから仕方なく付き合ってあげている」風であった。

そして何があったのかは知らないがSミットから分離したなんとかというマルチをしばらくやり、現在は水素水を作る浄水器と水素を風呂で発生させる機械を売っている。

そして父親も水素に毒され、今はそれらを販売している。私は水素水について聞いた時、こう思ったものだ。

「H2Oで水素入ってるのに更に水素を加えるってどういうこと?」

「そもそも水素は水に溶けにくい性質を持っているのでは?」

「水素を発生させて吸いたいのであれば金属と薄い塩酸を使えば水を通して濃度の高い水素を集められるのでは?」

上記の疑問を口にしたところ、何やら反論されたが全く覚えていないので多分死ぬほどどうでもよかったのだろう。

なお人体が水素を摂取することに関しては大学病院などで使われており、実際に効果があるのだと言っていた。大学で研究もされているそうだが、論文を読んだところ非常に小規模な実験がされていた。抗酸化効果やその他色々と効果はあったと書かれていたが対照実験の記載はなく、かつ非常に小規模の実験のようで、正直効果については眉唾レベルであると個人的には思っている。

そも、水素水と検索をして「消費者庁」やら「効果ない」とサジェストに出るあたりお察しな気がするが。論文ではいくつかの医学的効果を謳ってはいたが、対照実験に関しての記載はなかった。手かざし教ですら対照実験をしていたぞ。水素水を投与したラットやヒトの数値のみ示されても、対照実験をしない分にはわからないと思うのだが私がただ単に疎いだけだろうか。少なくとも医薬品扱いではないから「水素水を投与しました!こんな結果が出ました!」→「水素水を飲むと抗酸化作用で老化防止!病気予防!アンチエイジング!ソースは某大学の研究論文!」になるのだろうか。私には少しわからない。あとはアンチエイジングのようなものは長期的な研究になるのではないかと思うのだが、まあその辺りもよくわからない。素人質問で恐縮である。

母の学歴は知らないが、父は関西では有名な大学出身で別に学がないわけではなく、今まで宗教やらマルチに懐疑的であったために水素水にドハマりしたことには驚いた。正直今すぐにでもやめていただきたいが、YouTubeなどを見て光の戦士に目覚められるよりはまだマシだと思っている。

(追記:光の戦士という名称は某オンラインゲームのプレイヤーのことも指すと知りました。ここでいう光の戦士とは様々な悪の組織やどこかの大統領やナントカ人間と戦う方々のことを指します)

そしてここからが最近判明したことである。最近ぼんやりとマルチやらのずんだもん解説を見ていたのだが、そこでNポレオン・ヒルの成功哲学が扱われていた。ものすごく見覚え……あるな……?実家のキッチンやらトイレやらあらゆるところに飾られて……いたな……?と思ったのだが、どうやら自己啓発系で書籍などを購入するマルチらしい。そんなんもやってたのか…?お金ないとか貧乏とか言っていたのに、そんなものまで……?となったため、これを書こうと思った次第である。

なお、お金がないからと言い実家では風呂に湯を貯める時は大体人間のふくらはぎ程度までしかためさせてもらえなかったのだが、水素水を発生させ、水素風呂に入ることのできる装置は20万を超えるし、蛇口に取り付け水素水を発生させる装置は18万である。毎日風呂に肩まで浸かれる湯をためて、追い焚きまでしたとしても、都市ガスでなくプロパンガスだとしても光熱費は20万までいかないと思うし、そもそも水素風呂に入ろうとしているのに肩まで浸かれないレベルの深い水溜まりは本末転倒では?と私は思う。まじで浴槽の底に背中をつけて寝ころばないと上半身は湯に浸かれなかった。

私は母親が試した全ての宗教、マルチの商品達で何も効果がなかったと身をもって体験しているのでそういったものを一切信じていないし可能な限り関わり合いになりたくないと思っている。

なお母親はマッサージを習ってスーパー銭湯の一室を借りてマッサージ店を営業する、やまつげパーマができるようになってそれでお金を稼ぐ、など数々の事業に手を出してはすぐにやめているので、まあ……一時的にとはいえある程度のお金が稼げたSミットの時の体験が成功体験として刻まれているんやろな……と思っている。多分死ぬまで直らないだろう。

あと正直母親は毒親に分類されると思っているが、これはマルチや宗教を抜きにしてもの話なのでまた書きたいと思う。

私の発達障害は後天的要素ではないようだし、精神疾患も母親だけのせいではなく周りを取り巻く環境などもあっただろうから…と思ったが、一番症状が悪かった10代後半の時はほぼ引きこもってたから取り巻く環境なんてほぼ家庭だわ!まあ……根が陰キャなせいでグレて酒や煙草や違法薬物などに手を出さなかっただけマシかな…あまりに社会不適合者に育ったけど!まあ、そう思うようにしよう。

@nkmryt
自由に書くチラシの裏です。