せっかく泊まるなら

nkymut
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公開:2024/11/7

由緒あるホテルのがいいでしょ、しかも安いしとワイフ氏が選んだホテルは、メダン中心部にあるGrand Inna Hotel。蘭領東インド時代にはHotel De Boerとして名を馳せ、かの女スパイ、マタ・ハリも泊まったとかで、えっそんなシンガポールでいったらラッフルズホテルみたいな場所がなんと一泊40S㌦ちょい

ロビーに入ると、20世紀初頭アールデコ調のグラスなどが飾ってあり、スマトラのジャングルから帰ってきて泥だらけの足で踏み入れて良いのかな?と一瞬怖気づくも、ソファーででーんと寝そべったガキが鼻くそほじりながらアイスを食べていて、あれ?やっぱりこんな感じ?と若干の不安を感じつつ宿泊受付

「もしできたら旧館の方に泊まりたいんですが」と聞くと、受付の方は困った顔で「旧館の方はいまお客様を受け入れてないんです、でも、もしご興味があればご案内しますが」「ぜひとも!」と案内してもらった旧館は見事な吹き抜けのあるコロニアル建築で息を呑む。が、よく見ると壁から床まであたり一面飛び散ったコウモリの糞だらけ。「このお部屋ならもしかしたら」と見せてもらった部屋は、窓もなく、花柄マットレスに乗った薄ーいシーツにムッと部屋中に薫るカビ臭さ、(ひょっ、ひょっとしてこの部屋は従業員ルーム?)と訝しながら「もっとバルコニーとかがあるような部屋はないんですか?」と聞くも「残念ながら無いんです」とケンモホロロ

この糞コロニアル建築なのにバルコニーが無いなんてなんでじゃー、と思いつつも仕方なく新館へ、これといった面白みも高級みもない、ごくごくフツーのシティホテルでまあ40㌦でこれなら良い方でない?と腰掛けたベッドの模様と思しき黒い唐草模様がよくよく見ると、ガキが太い鉛筆でグワッグワッグワッと殴り書きした生々しきドローイング、とくとくと線を辿るとベット脇の壁に到達、グヌーンと天井に届きそうな勢いで大きく山を描きグルグルグルと真っ黒な渦「ほほぅ、さてはこれがレイク・トバですな」などと賛称しつつも、振り返るとベッド反対側の赤いソファーに溶けたアイスのあとがベトーッと流れて溶岩の如し、すかさず電話を取り「すみませーん、部屋むっちゃ汚いんで変えてくださーい」と部屋を変えてもらい一件落着。