なんだか訃報が続く。四月の半ばに元上司が急逝し、勿論復帰後の職場の雰囲気も沈んでいる。
二つの部署が共生している居室で、私の後ろの席にどっかりと座っていた声がデカくて陽気なおじさんだった。
これって加工できます〜?って空っぽの机に振り向いてしまう。おじさんがいなくてただでさえ静かになった部屋が更に静かになって、ずーんと空気が重くなって、あ〜もういないだっけ、と思う程度には実感がない。
ちょっと触れちゃいけない感じ。私以外は同じ空間で訃報を知らされたのもあって、今更おじさんの話をすると蒸し返すみたいになるかな〜みたいな。感情が皆と乖離しているというか…。
そんな感じで沈みきった四月の最終日、病気療養で数ヶ月お休みされていた保育園の先生が亡くなった。娘が一番大好きと公言する大ベテランの先生だった。転園後、行き渋りもなく保育園大好き園児に育ったのはその先生のおかげだった。
0歳児の風邪の余波でなんだかぽやんとしている姉も休みの予定だったが、訃報を伝えて告別式で流す歌を歌う、とのことで急遽午前中だけ登園させてもらった。式への参列は父母会の役員だけになりそうな気配だし、子供への伝え方に自信がなかったから。
普通の感じで帰ってきた娘は
「先生ねぇ、病院で頑張ってたんだけど今度お空にいくんだって。お星様になるときに流すお歌を録ったの。みんなのこと忘れて欲しくないからね。園歌と、先生が好きなにじ、上手に歌えたから喜んでもらえるよねー」と嬉しそうだった。
あ〜これはやっぱり理解してないなぁと思っていたら、なんでお星様になるの?と聞かれて、天国が空にあるから…とわけわからん説明をしながら泣いてしまった。
「うんうん、もう会えないのは悲しいねぇ」と芝居掛かったセリフとともにティッシュを渡してきて、こっこいつ…引っ越したくらいの感覚でいやがる…とイラっとしていたら、
「先生はいつも柔らかいうさぎのティッシュ(鼻セレブ)をお腹につけてて、いっちばん優しく顔を拭いてくれるから好きなんだ〜」と二年前の思い出話を披露してきた。(五歳児の二年前って人生の半分…?すごすぎ…)
そのあとは、アレクサ!にじ!流して!リピート!って歌っていた。にわのシャベルが一日濡れて、の出だしでもう無理だった。何これ、お葬式の歌なの…?
最初から最後まで涙腺が刺激され過ぎるので、ちょっとさ、そろそろ他の歌にしよう…って頼んだら「忘れてほしくないし、忘れたくないからだめ〜」って断られた。
ああ、それが五歳児なりのお別れの仕方で、追悼なんだな。理解してなさそうだな〜とか思ってごめん。
わかったよ。みんなとたくさん先生の好きなところ話して、忘れないようにしたらいいよ。にじも好きなだけ歌おう。きっときみの気分も晴れるんだよね。
ママもおじさんの話、会社の皆としてみるわ。笑い声がうるさくて電話口でキーンってなったねーとか、残業してるとちょっかいかけてきて話し込んじゃったねーとか。
きっとすごく泣いちゃうから、普通のティッシュじゃ痛いんだよね。鼻セレブ、沢山買っておくよ。