作った本の装丁メモ②

Nanase
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公開:2024/1/11

2023年夏、最初で最後のつもりで同人誌を1冊作り、即売会イベントにも参加した。その経験があまりにも楽しく、もう1冊だけ作ってみたいと思っていたところに、以前から気になっていたデザイナーさんが同人誌デザインの募集を再開するとSNSで告知しているのを見かけた。そして、勢いで書きかけの話の表紙デザインの制作をお願いし、わたしは2冊目の本作りに取り掛かった。

当初は頒布予定はなく、表紙デザインをCanva、本文を縦式で制作するつもりだった。けれども、せっかく表紙を外注するのであれば頒布もしたい。となれば、組版デザインにもこだわりたい。ということで、組版デザインも前回と同じデザイナーさんに制作をお願いすることにした。

2冊目

・2023年冬発行、B6、カバーなし、本文90P(表紙と裏表紙の4Pはカウントせず)

・くちえ用紙:クラフト

・表紙用紙:NTラシャ漆黒170kg

・本文用紙:淡クリームキンマリ70kg

・本文:貂明朝、13Q(9.213pt)、42字×19行、一段組

1冊目はあまり予算を気にせず、やりたい装丁は箔押し以外概ね詰め込むことができたのだが、頒布価格が決して安くない金額になってしまった点が少し気になっていた。(とはいえ、イベント参加費はもちろん、外注費や通頒時の梱包代、ノベルティなどは自己負担した。この辺りはセンシティブかつ考え方がサークルさんによって異なる部分であり、正解はないと思っている。)そこで、2冊目を作る場合はもう少し手頃な金額の本にしようと印刷所さんをいろいろと調べていた。その中で、とある印刷所さんのフェアがとてもかわいく、かつ早割を利用すれば金額も抑えられることを知った。選べる表紙用紙と白トナー印刷の組み合わせはまるでノートのようで、ちょうど作ろうと思っていた本のページ数が60ページ程度と「本」と呼ぶには薄いことから、いっそ「ノートのような見た目の本」を作ってみようと思った。

できあがっての感想としては、装丁に関してはただただ大満足の本に仕上がった。表紙デザインがとにかくかわいく、表紙用紙との相性もよかった。NTラシャは爪を引っ掛けるとうっすら傷がつきそうな用紙ではあるが、ノートのようなデザインであるのでそれもまた味になる。

本文のデザインに罫線を入れる仕掛けをしてもらったので、小口に本物のノートのように罫線の入ったデザインとなった。

お手頃な金額でありながらも印刷所さんの印刷と製本はとても美しく、その点も非常に満足度が高かった。

残念であったのは、頒布を意識したことで本文を書き直して文字数が増え、予定よりページ数が多くなったことにより価格が少しあがったことと、ノートにしてはぶ厚めになってしまったことだ。よりノートらしさを求めるならばA5にした方が、ページ数が抑えられてノートらしい見た目になっただろう。けれども、B6のサイズ感はかわいさと上品さを兼ね備えていてとても気に入っている。文庫より一回り大きいため、表紙デザインをより楽しむことができたようにも思う。

本文については、フォントが少し太めの書体で非常に読みやすく、また、表紙デザインとの相性もよかったものの、文字の大きさが想定より大きく感じた。とはいえ、一行の文字数が多いと斜め読みには適さないため、8.5ptでは小さいかもしれない。9ptくらいが適当だろうか。

2冊目はイベントには参加せずに通頒をしたが、思いのほか多くの方に手に取っていただき、いずれ即売会イベントに出るときに持っていこうと多めに刷っていた分も通頒で手に取っていただくことができた。わたしはBOOTHを利用しての自家通頒をしたのだが、匿名配送の送料が高いため、手に取っていただいた方には結局あまりお手頃ではない金額になってしまったのが少し心残りである。ただし、表紙用紙に加工を施さなかったため、手渡しのイベントでは傷がつきやすかったように思うので、通頒のみの頒布となったのは結果的にはよかったのかもしれない。