木村徳彦の半生を読んで

noppe
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普段あまり本は読まないのだけど、この間見たマツコの知らない世界で紹介されていた「五条」を読んだ。

この本は作者である木村徳彦のエッセイ集のような本なのだが、章の構成が独特で初見だと数ページでウッとなってしまう。

というのも、全13章からなる本書の前半6章までが、英語で書かれているからだ。これは木村が32歳までアメリカで生活していた事に由来する。

翻訳された本も無いので、自分は7章から読んだのだが十分に楽しめた。

7〜12章は、木村が日本に戻ってきて個人商店を開く話がメインになる。昭和初期の、ある程度の容認が蔓延る空気感は今の時代では味わえない世界観だ。木村が賞味期限の切れた食べ物を加工品として販売し、資金を集めた話が一番気に入っている。

ただ、エンタメ寄りの12章までと異なり最終章は木村本人の思想の話になる。

明るい半生と裏腹に、木村の深層心理は酷く荒んでおり、誰1人として心から信頼する事は出来なかったという。

最終章は以下の言葉で締めくくられる。

「不揃いな葡萄酒の香りを嗅ぐ、呑まずとも分かるのは、ピノノワールのコルクだけ」