「ネットフリックスの社員ってやっぱり毎日映画とか見るんですか?」
「見ますよ、大体業務時間の8割くらいかな。映画を見るのは」
「8割ですか?それは映像制作のチームだからとかですか」
「いやいや、全員ですよ。全員。CEOも警備員も、あなたも入社したら見ることになりますよ。」
「それはすごいですね…。そんなに映画を見て仕事になるんですか?」
「それが仕事みたいなものですからね、もちろん最初は大変でしたよ。」
「そうでしょうね。どんな映画を観るんですか?」
「ダンケルクですね。皆それしか見ません」
「クリストファー・ノーラン監督の」
「そうそう、それが理解出来るまで観るんです。」
「理解出来るまで、というと」
「うーん、ちょっと言葉でいうと難しいんだけど…。あ、そこのホワイトボードがあるか。借りてもいいですか?」
「えぇ、どうぞ。」
「ありがとうございます。うーんと、そうだなぁ、えーと。この形って見たことありますか?」
「えっと、台形ですか?」
「台形に見えるけど、少し違うんです。奥行きが常にある直方体なんです。これは」
「ちょっと、言ってることが分からないのですが」
「この世界の矛盾っていうのかな。あ、今考えていることを当ててあげましょうか」
「急になんですか」
「「そこは、TENETじゃないんかい」」
「え」
「ほらね。今、同調しているんですよ。この部屋ごと」