「加湿器を探しているんですけど」
「ありがとうございます、乾燥しますからね。当店ですと、象印のスチーム式加湿器がおすすめですよ」
「へぇ、おしゃれな見た目ですね」
「そうでしょう、グッドデザイン賞も受賞しているんですよ」
「それは、EE-DD50じゃなくて、EE-DA50の方ですよね」
「え?」
「あ、いや、なんでもないです。こっちのグレーの方にしようかな、2万円かぁ。」
「お客さん、今なら多少でしたら頑張らせて頂きますよ」
「頑張る、というと。」
「ですから、お値引き。させていただきます。」
「本当ですか、もう少し安かったらいいなと思っていたので助かります」
「ちょっと上に確認してきますので、少々お待ちください」
「はい、お願いします」
それから、10分経っても1時間経っても、店員さんは戻ってこなかった。
後から知った話だが、その電気屋さんには店員は一人もいなかったそうだ。