「よいこのイノベーション」は存在するか? 第1回

nobuchan
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はじめに

こんにちは、nobuchanです。私は現在コンサルタントとして働いています。

このエッセイでは、私が過去に審査員として参加したある学生ハッカソンイベントを見た際に感じたことを、お話ししたいと思います。このエッセイによって、みなさん一人ひとりが「イノベーション」と言う言葉の持つ意味・コンテクストについて改めて考えるきっかけとなれば幸いです。

忙しい方向けにこのエッセイの論旨を先に説明しますと

  • 「よいこのイノベーション」は存在するか? ⇒ No

  • イノベーターおよびそれを志す人の心映えとして、「反逆」と「愛」が必要

  • 反逆においては、知らないうちに型を刷り込まれる危険性があり、それに抵抗するためには、既成の型を疑い、超越していく心が重要

  • 「愛」については、自分も含めた誰かに真剣なまなざしを向けるべき

  • よいこであることを暗に求められる社会への抵抗の手段として「守破離」、「チェスト=知恵捨て」、「思考の先鋭化」、「内省」、「DIY」の精神が必要

となります。少々長い文章のため複数回に分けてお話ししたいと思いますので、お手すきの際に少しずつ読み進めていただければ幸いです。

序文

少し前、私はある全国規模の学生ハッカソンイベントに審査員として参加しました。そこではまさにアイデアが百花繚乱。学生の方たちの創意に富むアイデアとそれを具現化された作品を見、1つとして同じ答えがないことに驚嘆させられるばかりでした。

このエッセイでは、イノベーターを目指す学生たちの姿を見たことをきっかけとして(破壊的)イノベーションという言葉の身体化(自身の身体の外側にあるモノや道具をあたかも自身の身体の一部・延長のごとく認識・使用している状態)に求められる精神・心映え、そしてこのエッセイのタイトルである「よいこのイノベーションは存在するか?」について考えていくこととなりますが、先に結論を述べるとNoだと思います。ではなぜそう思うのかを、ハッカソンにて私が感じたことや、私自身の経験を基にお話ししたいと思います。なお、このエッセイ内の「イノベーション」は、「破壊的イノベーション」を指すものとご承知ください。

Rebel Love Song イノベーションのコンテクスト

 さて、「イノベーション」という言葉を聞いたときに、みなさんはどういったことを思い浮かべるでしょうか?

なんだかとてもカッコいい?お金が儲かる?課題解決?人の革新?バズワード?イキリ言葉?

Weblio英和辞書で「Innovation」で検索すると、「革新」とか「刷新」と言った言葉が出てくるのですが、本エッセイをお読みのみなさんは、それ以上の甘美さを以ってこの言葉を認識されているのではないでしょうか?

私なりにイノベーションの言い換えを試みるならば、米国のヘヴィメタルバンド「Black Veil Brides」の代表曲の1つ「Rebel Love Song」となります。なぜかといえば、そこにイノベーションのコンテクストが凝縮されていると思うからです。

イノベーションは恐ろしいモノ

イノベーションというのは、とても恐ろしいモノだと言えます。

というのも、イノベーションは「破壊的」と付く通り、その中に反逆(Rebellion)を内包するもので、好むと好まざるにかかわらず既成の価値、文化、行動様式を著しく毀損することを宿命としています。それは、デジタルカメラの登場がフィルム市場を(ほぼ)完全に破壊し、そのデジタルカメラ(殊にコンパクトタイプ)すらも、スマートフォンの登場で市場から駆逐された点を取っても明らかでしょう。

甘美な響きを持っているクセに全然優しくない。未来において、イノベーションが今よりもっと早く・多く起こる社会が到来したら、社会は今よりもっと不安定で混沌としているかもしれません。

イノベーターの心映えについて

さて、そんなイノベーションという言葉を身体化するためには、心映えとして反逆の精神が必要となりましょう。

反逆の精神がないということはつまり、既成の価値、文化、行動様式を是認している状態と言えます。そのような状態で、人はいかにして目に見えないものごとの裏側、課題、コンテクストに気付くことができるでしょうか?

もちろん反逆の精神を発揮せんとムリして斜に構えてみたり、傾奇者を装う必要はないと思います。ただ、従順さや波風を立てないことがいつも最善ではないとも感じますので、いざというときに反逆できるパワーは備えておくべきでしょう。

さて、第1回はここまでにしたいと思います。

第2回では、いくつかのエピソードを交えつつ、愛と反逆について論じていきたいと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。