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1月21日(火) 6時間目のトロンボーン

nolimbre
·
公開:2026/7/16

小学校5年生の1月21日(火) 6時間目,僕は初めてトロンボーンを吹いた。

曜日と時限まで正確に覚えているのには理由がある。「日付と曜日と時限を一生覚えているというチャレンジをしよう」と決め,それが今までのところ成功しているからだ。

通っていた小学校には「スクールバンド」というものがあった。6年生になると1人が1つずつ楽器を担当し,イベントなどでマーチングバンドの演奏を行うというものだ。

誰がどの楽器を担当するかというのは,5年生の終わりごろ,基本的には各自の希望を踏まえて調整し決められてたと思う。しかし,僕のトロンボーンは自分で積極的に希望したものではなかった。当時の僕はピアノを弾いており,クラスの中では演奏が得意でリズム感もある児童だった(と見做されていた)。スクールバンドは,先生が指揮をすることが多いが,運動会でのパフォーマンスなどでは児童が指揮をやることがある。それで,僕はそういう場合の指揮者要員として白羽の矢が立った。そして,指揮をするとき僕は演奏から抜けることになるので,担当する楽器はもともとそんなに目立たず1人くらい抜けても大丈夫なトロンボーン(すみません)が割り当てられた,という経緯だったと思う。当時そういうことを事前に担任の先生が話してくれた記憶もあるが,いま考えると小学生のクラスを相手にこういった調整をする先生は本当に大変だろう。頭が下がる思いだ。

こうして消極的な理由で決まったトロンボーンだったが,金管楽器は初めてで,あの形でどのように音がでるのか想像もできず,なんだかんだでかなり楽しみにしていたのを覚えている。そして初めてトロンボーンで音を出したのが,5年生の1月,スクールバンドの活動が既に終わった6年生から楽器の吹き方を教わるというイベントだった。構え方や手の位置,マウスピースへの口の当て方などを教わって,初めてトロンボーンで音を出せたときは感慨深かった。そのときの,教室のあちこちで楽器ごとにクラスメイトが固まり同じように音を出している光景もぼんやりと覚えている。

そのとき僕が思いついたのが,「初めてトロンボーンを吹いた日を,一生正確に覚えていたら面白いのではないか」ということだ。毎日弾いていたピアノは楽しかったので,1年間のスクールバンドが終わったらもうトロンボーンとのつきあいはなくなる可能性が高いとあのとき既に思っていた。それでもトロンボーンを吹いた1年間を忘れることはないだろう。そんなトロンボーンを初めて吹いたのが「1月21日(火) 6時間目」だったということをずっと覚えていれば,まずそんな細かい情報を覚えていること自体が面白いし,もしも今後の人生で起こるであろうちょっとした記念日をいちいち覚えていれば,もしかすると興味深いことが起きたりするかもしれない……。

それで,トロンボーンの音が出せるようになって余った時間を使い,覚える情報の選択をしはじめた。日付はマストだ。年はすぐに分かるから覚えなくてもいいが,曜日は相当調べるか真剣に計算するかしないと分からないから,覚えていてすぐに言えたほうがよい。(当時はカレンダーアプリなどというものはない。)それで,時間を含めて「1・2・1・の・火・ろ・く」というリズムで覚えようと決意し,何度も心の中で復唱し,そのリズムを忘れないまま現在に至っている。

ほかの些細なできごとの日付も覚えることも視野に入れていたが,残念ながらいま覚えているのは 1月21日(火)6時間目だけである。そもそもほかの日を覚えるよう努力したことがあるかどうかも定かではない。

そしてここ最近の僕は,「To-Doリスト兼作業記録をテキストファイルに残していけば,後々振り返って役に立つし面白いかも」とか「日々の色んなできごとを Obsidian に作っていけば自分用の面白いログができるかも」とか思い立ってはすぐに挫折したりしている。発想も能力も当時とまるで変わっていないのである。