COD虎牙道ストーリーを読み進める

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(ネタバレしかない!)

 

 

 

 

 

 

タケルが弟妹を見つけた時の漣の声音。聞けば聞くほど意味を感じてゾクゾクする。

「あーあ、見つかっちまった」とでも言いたげな、投げやりで、目を逸らしたくなるような、しかしそれはこちらの気のせいのような、絶妙なニュアンスだ。

或いは漣は、タケルを羨んでいたんだろうか?

「必ず弟妹を見つけ出して、また昔のように幸せに暮らすんだ」というタケルの誓いを、無意識のうちに羨んでいたんだろうか。

「見つけさえすれば幸せになれるのか」

「オマエの存在は相手に祝福されてるのか」

「忘れられたり、面倒がられたり、嫌がられたりしないのか」

タケルも道流も漣でさえ、きっと大河兄妹の再会は祝福されて当然のものだと考えていたとすると、

「違ったのか」

「コイツもそうなのか」

「望まれない再会だったのか」

などと感じることもあるかもしれないし、ないかもしれないし、無意識かもしれない。

ガックリと肩を落とし失意の底に落ちるタケルに告げたあの言葉に、どんな意味があるだろう。それが身勝手なものだとすれば、

「オレ様は、それでも追いかけた」

「忘れられても、面倒に思われても、嫌がられても、何度でも追いかけた」

「何をぼーっとしてんだよ」

「オマエの夢ってのは、そんなもんなのか?」

あの声音は苛立ちなんじゃないかと思う。漣の声にはよく感情が乗るから、そんな気がしただけだが。

だったらどうしてタケルの弟にまで声を掛けたんだろう。あの声もやっぱり怒っているように聞こえた。

タケルの人生が自分事のように思えたのは、タケルが弟妹に拒絶されたからだ。だからもしかすると漣は、タケルが傷ついたから声を掛けたというよりも、傷ついた自分自身を思い出してしまったから声を掛けたんじゃないかと思えてきた。

「オマエのその態度一つで、積み上げてきた努力が、時間が、感情が、全部ムダにされた」

「オマエがただ受け入れるだけで、こんな惨めな思いをせずに済んだのに」

「オマエの声が頭の中から離れない。否定と拒否が、人生一個を踏み潰そうとする」

「絶対に負けてやらねェ」

感情移入とも言えるかもしれない。とにかく漣はこの時“タケルを拒否したタケルの弟妹”に憤りを覚えたと同時に、“漣を拒否したタケル”にも憤りを感じていたのかもしれないと思った。

だからやっぱり弟の言葉にショックを受けて休業を選択したタケルにも苛立ったのだ。

タケルの努力に自分を重ねてしまうほど、漣はタケルと時間を共にし過ぎたんだ。

弟妹という存在がタケルの視野を狭めていたんだとしたら、その視野の外の暗闇に追いやられたのが漣だ。ようやく認めて未来を……テッペンを獲った時の景色の話ができるようになったのに、今回の出来事がまた漣にささくれを作ってしまった。漣にも過去と向き合わなければいけない時がくる。

今回タケルは弟妹とは別のところにアイドルとしてのやりがいを見い出してTHE 虎牙道へ復帰した訳だが、道流の言うように活動していく中でどうしても弟妹と交わる場所が出てくるんだろう。

その時タケルが「それでもアイツらと話したい」と言えば、きっと道流がタケルを傷つけたくないと少なからず難色を示すだろうし、

「アイツらを傷つけることになるならもう俺の夢は諦める」と言えば、漣は自分の人生をかけてタケルを問い詰めたくなるだろう。

タケルが「夢を諦める」ということは、漣にとって「自身の選択を否定されること」でもあるかもしれない。

傷つけるから、取り付く島もないから、こんな状況だから、自分の根っこにあった大事な理由(ワケ)は諦めますなんて、

じゃあ傷つくかもしれない、取り付く島もない、こんな状況になっちまった、だけど、自分に課した大事な理由(ワケ)を諦めるわけにはいかねェとタケルを追う選択をした漣への侮辱かもしれない。

何も知らない、何も覚えていないタケルにとっては理不尽なことだが。

もし漣がこの感情をタケルに告げる日が来るとしたら、それが漣が初めてタケルとの出会いを誰かに語る時になるんじゃないかと思ってる。

あー!ドキドキする ちょっと怖いね

@nonpermanent
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