映画レビュー: 君の名は

nosen
·
公開:2024/5/19

★★★★☆

公開当時一回見たけど、最近ちょっとしたきっかけで見直したので、感想を書き残しておきます。ネタバレあり。

良いか悪いかでいったら間違いなく、良い映画でした。

美麗な映像、よく練られたストーリー、エモーショナルな音楽。青春、SF、ファンタジー。王道のボーイミーツガールもの。

これが素直に楽しめない奴は相当に性格がねじれてると思います。

日常の入れ替わりパートのドタバタも楽しいし、入れ替わることで本人では出せない魅力がそれぞれに生まれる描写も痛快でした。

お互いの時間が3年ずれてることが明らかになるくだりは非常に秀逸な展開で、伏線もバッチリ効いて物語というものの面白さを堪能できます。やはり隠された情報をいかに適切なタイミングで公開するかが、ストーリーテリングの成否を決めますね。

その後の彗星のパートは、瀧くんと三葉さんの絆が深まり、危機的な状況の中でお互いがお互いにとって大切な存在であることを確認する展開になりますが、そこまでに積み重ねたエピソードが効いていて、説得力がありますし、それだけに、忘れまいと誓っても忘れてしまう切なさが非常によく表現されてたと思います。

入れ替わり設定のお陰もあって、物語の展開はスピーディで全く退屈する暇はなく、ラストの再会シーンでは爽やかな感動に包まれる良作です。

ただ、あえて難点をいうと、爽やかさの中に無視できないエグみのようなものがどうしても気になってしまったのが残念。

なんというか、やたら説明的なモノローグとか、ややご都合主義的で強引な展開、取ってつけたみたいな脇役キャラの存在が、ひきこもりの童貞が想像で書きました、みたいな違和感になって、100%感情移入できない原因になってるんですね。

どんな親友でも簡単に変電所の爆破には協力しないでしょ。作者の方、友達いるんですかね?そこは、三葉さんは巫女なんだから、普段から予知夢をみていて、それを親友にだけ明かしてたという実績があったので突飛な予言も信じられたとか、そういう設定を一個入れとくだけでぐっと説得力が上がったんじゃないですかね?

瀧くんに三葉のおっぱいをしつこく揉ませてる場合じゃなくて、そういうところを頑張ってほしかった。

神社の由来に関するおばあちゃんの話とか、組紐と時間についての瀧くんのモノローグとかも変に説明的で蛇足だと思いした。そんな理屈は全部省いて観客の想像に委ねたほうが良かった。

奥寺先輩のキャラも微妙で、作者は明らかに三葉さんみたいな清純美少女が書きたいのに、謎のバランス感覚なのか、性癖隠しのアリバイづくりなのか、いかにもステレオタイプな大人の女性キャラを無理にやらされる感じがあってちょっと不憫でした。

全体的に都会の描写はリアルだけど、田舎の描写に無理がある感じだったですかね。糸守の登場人物の中で三葉さんだけは妙に解像度が高くて、それ以外の人とか環境は物語を成立させるために後付けしたみたいな感じがしちゃいますね。

ともあれ、そういうところが気になるのも全体としてはよくできていたからで、基本的には良いエンタメでした。アニメ映画としては、サマーウォーズよりは上、ナウシカやラピュタには遠く及ばずといったところでしょうか。