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「未来」二〇二六年九月号

走、馬、灯。どれもうつくし過ぎるから一字を「町」にして うつくしい

口にしてことばで触れたところより世界は腐る。ならばどうする

僕はきみがずっとうれしい壊れても壊れていても壊れられても

ブラウスの左の胸のブローチの馬はいずこを駆けているのか

ボルゾイの絵を脳内に浮かべつつ、いや心血の海に浮かべつつ

 夫は

音の鳴る薬罐しかいらないと言う。音の鳴るのはたのしくて嫌

紙袋に本をがんがん詰めるときごくたんじゅんな祈りは兆す

マグカップで作るプリンはマグカップ型にかたまる 僕らもそうだ

さいしょから中身はなかったふうにある駅舎で拾ったしじみの殻は

/西村曜「未来」二〇二六年九月号

@nsmrakira
西村曜(にしむら・あきら)歌人 未来短歌会所属 第一歌集『コンビニに生まれかわってしまっても』(書肆侃侃房)、共著に 働く三十六歌仙『うたわない女はいない』(中央公論新社)/水たまりとシトロン/短歌同人 水面/絶島 Bluesky:bsky.app/profile/nsmrakira.bsky.social X:@nsmrakira