寂しさを端的に言うものとして粒マスタードの些細な小瓶
痙攣のように薔薇咲き薔薇園は盛況ぼくはすこし悼んだ
スリッパの買い替えどきがわからなくなった頃だよ買い替えどきは
孤独死から逆算される孤独生 想像上の滝動かない
花束を花束のまま黴びさせて「尊厳」の厳の字義を信じて
おとうとは木綿豆腐のかたくなに他人と話さず一日は暮れる
ぼく達は墓をもたないぼく達はハリボーグミを分け合って食べる
ろうどう、と口にするからこぼれてく手の挽き肉は何なんだろう
そうだった餃子を包む指先でかつて指輪を嵌めたのだった
コーヒーにココアを注ぎ生きていくならばドリンクバーでまた会う
/西村曜「未来」二〇二五年九月号