満開宣言から6日。
せっかくなのだからと、桜の並木道を歩くことにした。
並木道は、人、人、人だらけ。
ここにいる人は、だいたいが花見客。
あやうく人酔いしそうになる。
人の流れが途切れる場所で立ち止まった。
ノイズキャンセリングのイヤホンを外してみる。
すると、花見客の話し声が四方から聞こえてくる。
皆の声色が明るいのは天気が良いからか。
並木道沿いの川に浮かぶのは桜の花びら。
この花びらはどこの木からやってきたのだろう。
この花びらはどこに流れてゆくのだろう。
花びらを眺めて思いを馳せるだけの時間。
花見客のひとりが声を上げる。
きれい。
花見客の喧騒は絶えることがない。
頭上に視線をやると、花びらを落とす桜の木の枝が、視界に入った。
その枝の姿は、並木道を離れた後もずっと、網膜に焼き付いている。
今日眺めた淡紅色の花びらたちよりも、はっきりと。