昔は人の手を見るのが好きだった。好みの手に会うとうれしかった。
大学1年の時に友達になった同級生はとても素敵な手の持ち主だった。写真に撮らせてもらった。大きな手のひらに長い指は最高の肉厚さだった。彼女は別の大学を受けなおし、翌年にはその大学へ行ってしまった。そのあとはだんだんと会わなくなったが、大学を卒業して十数年経って久しぶりに会うことになった。
彼女の家に1泊させてもらい近況報告し合った。私は手のことを忘れていた。別れるとき、彼女が握手を求めてきた。その手を見て思い出した。ああ、この手だったなあ。そして「相変わらずいい手してるなあ」と私は言ってその手を握って別れた。
それからまた十数年経って、今ふとその彼女の手のことを思い出したので書いている。
最近はいろんなものを見ることをやめてしまったな。