そのとき、朱色の猫が言ったのだ。
「君は変わった顔をしているね」
私はむっとした。なぜ初対面の猫にそんなこと言われなければいけないのだ。
だから「あなたの毛の色だっておかしいじゃないか」と言い返した。
すると朱色の猫は私をバカにするような目で見て言った。
「これはとても高貴な色だ。私はヴァン・・・・・出身なのだ」
どこの出身なのかよく聞き取れなかったが、「へー」と感心したように言うと朱色の猫は胸を張って「フフン」と鼻から息を出した。
「それにしてもここは寒いね」
と急に寒そうに震えだしたので、ちょっとかわいそうになって私は持っていた湯たんぽを渡した。
すると「これはいい」と言ってするっと湯たんぽの上に乗るとそのまま丸くなって、いつの間にか消えてなくなってしまった。
私はもうちょっとこの朱色の猫と話がしたかったので、消えてしまったのは残念だった。
出身地をちゃんと聞いておけばよかったと思った。