story2 朱色の猫

そのとき、朱色の猫が言ったのだ。

「君は変わった顔をしているね」

私はむっとした。なぜ初対面の猫にそんなこと言われなければいけないのだ。

だから「あなたの毛の色だっておかしいじゃないか」と言い返した。

すると朱色の猫は私をバカにするような目で見て言った。

「これはとても高貴な色だ。私はヴァン・・・・・出身なのだ」

どこの出身なのかよく聞き取れなかったが、「へー」と感心したように言うと朱色の猫は胸を張って「フフン」と鼻から息を出した。

「それにしてもここは寒いね」

と急に寒そうに震えだしたので、ちょっとかわいそうになって私は持っていた湯たんぽを渡した。

すると「これはいい」と言ってするっと湯たんぽの上に乗るとそのまま丸くなって、いつの間にか消えてなくなってしまった。

私はもうちょっとこの朱色の猫と話がしたかったので、消えてしまったのは残念だった。

出身地をちゃんと聞いておけばよかったと思った。

@nyaoish
誰も知らない