今も昔も実家はそんなに裕福ではない。中の下というところか。
経済的なことなのか親の教育方針なのかわからないが、お小遣いはずっと少なかった。でも、食べるものに困っているわけではなかったし、給食袋とかはいつも母の手作りだったけど、それが節約のためだからとかそんなことは全然わからず、ただ、なんかみんなと違ってダサいなあくらいにしか思っていなかった。
小学校3年くらいのある日、市のお祭りに友達と行くことになり、私は親から多分500円くらいもらって出かけた。あまり覚えてないけど、買えるお金で何か買って食べたりしたと思う。
あるお店で手作りのブローチが売っていて、同じものが二つあったのでお揃いで買おうということになった。1個700円くらいだった。私はお金が足りなかったから買えなかった。
そしたら友達が、じゃあ足りない分は私が出すから一緒に買おう、と言った。私はそれがいいことなのかわからなかった。よくないことのような気がした。でも欲しかったから、そうした。
多分私が200円くらい出して、友達が、私の足りない500円と、自分の分を出した。それがかっぱのブローチ。
親にそのこと言えなかった。本来なら親に言って、出してもらった分を返さなきゃいけなかったんだろうけど、そんなこと考えつかなかったし、言ったら怒られるという気持ちがあったのか、言わなかった。
そしてうちはお金がないのかもしれないと、だんだん感じるようになった。まあ、それから、どういう仕事をしているかとかそういうことより、お金があるかないかとか、何事にも表面的な事しか見られない人間に私はなっていくんだけど。
一度も使わなかったそのかっぱのブローチは30年以上たった今でも捨てられずに持っている。