先日、こんなニュースがあった:
話としては、トランスジェンダーの文脈で、生活実態が女性である方に対し、性別再割り当て手術を受けなくとも戸籍の性別を変更を認める、という内容。
んで、この流れで、
「未手術のトランス女性が女性用設備を利用できるようになる」と言う事で発生する「不安」に対して解決ってできてないよね
と言うような発言をチラ見した。
まぁ誰が言っていたかについては些事なんで特に取り上げないけど、 今までのトランス排除言論の流れで、
未手術のトランス女性が女性用設備を利用できる
上記(1)に起因してトラブルは不利益を被る「不安」がある
なので上記理由で未手術のトランス女性は排除すべき
と言うような理路があるんだけど、私としてはこの手の理路を一切認めてはならないと言う結論になったので、その点を整理しておく。
「解消できない不安」が理由の排除は誰かの永久追放を可能にする
先にも述べたように、私は上記のような「不安」が解消されないからと言う理論立てに基づく「排除」については、一切認めるべきではないと考えている。
これは、この理路はその「不安」が解消され得ない場合、その当事者の永久的な追放を可能にし、延々と多数派から少数派への迫害を肯定させてしまう、という事が主な理由。
例えば精神障害者の話で言うと、統合失調症を患っている方向けの施設を新設しようとすると、必ずと言っていいほど「子供たちに何か有ったらどうするのか」などの地元から「不安」の声が上がる。
やっかいな事にその「不安」は別に空想でも妄想でもなく、「統合失調症」と言う症状の一部に「他害」がある以上、その「不安」は偏見はあれど現実に根差したものではあるし、否定ができない。
一般に、統合失調症による「他害」は当事者の情緒が安定していれば引っ込むし、また投薬治療も上手く進んでいればその手の症状は出ない。
しかし季節的な要因や時世的な事柄、あるいは当事者自身を取り巻く環境の変化などで、一時的に状態が悪化し、症状としての「他害」が出てしまうリスクは当然のようにある。
となると、この漠然とした「当事者が誰へ他害するかもしれない」と言う「不安」は解消されない。と言うよりも解消されようもない。
よって「他害されるかもしれない」という「不安」を元にした排除は永久に実現できる。
またこの手の話ではトランス女性への言論の中でも見つけられる。
例えばトランス女性への「不安」の中に、未手術のトランス女性へ女性用設備の利用を許すと、他の女性一般の利用者とトラブルになる、と言う話がある。
実際、我を通してトラブルの末に逮捕、というケースは確かに存在して、だいたいは報道された内容通りであれば「そりゃそうなるだろ」と言ったような話である事がほとんど。
そして仮に建造物侵入で有罪でも下れば、トランス女性は男性刑務所で服役することになるから、ほとんどの当事者はそこまでのリスクを取らない。
ただし、既にそういった事案が報道されている以上、そういったトラブルを起こすような輩がトランス女性の中にも居る「かもしれない」という事は否定できない。
となると「トランス女性がトラブルを呼び起こす」という「不安」は解消されることは無いし、その解消できない「不安」を理由に排除を認めてしまえば、社会一般は彼女らの永久的な排除を完成させてしまう。
そう言った理由から、私はその手の解消しない・解消し得ない「不安」を理由とした「当事者の排除」を認めることは出来ないし、認めるつもりはありません。
まぁ、周りがどう捉えるかは別だけどね。
あと、上記のような話は「差別」と「偏見」の話だし、そもそも「他害」のリスクも「トラブル」のリスクも世間一般のシスジェンダーな健常者の方が圧倒的に多いので、トランス「だけ」がリスクになる訳ないでしょ。
そしてこの手の話では「排除される方から見るとどうなるか」が毎回欠けていて、トランスも精神障害者も、別に世間と軋轢を生みたい訳じゃないんだよね。
だいたい、ただでさえ性別への違和感とか不和感で常にストレスが掛かってるし、下手にトラブルを起こすと追い込まれるのは明白なんで、むしろトラブルを起したくないのが普通。まぁたまに変なのも見かけるけど。
あとこの手の話で「性自認が女性なら女性の気持ちは分かりますよね?」と言う輩が居るけど、それ、周りとの価値観・見方の違いに苦しむASD全体に喧嘩売ってる?と、毎回思ってます。
「性別への違和感・不和感」も「人の気持ちが分からない」も苦しいんだよね。本当。
あと変な人関連の話で、私はインターネット上のトランス界隈とか女装界隈とも縁はまったくなく、その手の話をどうこう、と振られても「いや知らんがな」となるのがオチです。
というか、当事者との交流という文脈で縁があると言えば、現実でのLGBT当事者会に数回参加したぐらい。
なので変な人が云々と言われても接点がそもそも無いんで、何も言えることはありません。せいぜい愚行を聞けばなるほど愚行ですね、と答えるぐらいです。はい。