「おはようございます」
「良い天気ですね」
「暑くていやになりますね」
「今朝は特に冷えましたね」
というのが、挨拶のセット。
挨拶は挨拶のみで終わらず、「お久しぶりです」となれば「お元気でしたか」と続く。
これは特に関わりのない人同士の交流によく起きる。仲の良い者同士ならば、尋ねずとも大体を知っているからだ。
そこには高確率で、いわゆる「ハラスメント」がやってくる。
結婚はまだか、子供はまだか、母乳かミルクか、一人っ子か? 二人目は。三人目は。
これも挨拶なのだと思う。
こういうことを、こんにちはの後に続ける人たちの中では、天気の話と同じテンションなのだ。それになんと答えようが、決まったパターンの返事がかえってくるだけなのだ。
すれ違うだけの他人に興味を持つ人は、そんなに多くもないだろう。
そう考えてみると、少しは生きやすいのではないかと思える。
私がそのうち老人になった頃、たとえば玄関先で顔を合わせた若者に、「良い天気ですね。お出かけですか?」と聞いたならば、「プライベートハラスメントだ」と眉を顰められるのだろうか。
「好きな食べ物は?」と尋ねると、「食に関する嗜好の自由を」と煙たがられるような未来が待っていたりするのかもしれない。
極端なのはよくない癖だ。