厄除けとインコ

ochiri
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豆はまいてないが、スーパーで580円で買った恵方巻を等間隔に切り分けてただの巻き寿司に仕上げた節分が終わり、今日は立春。東京は曇り。午前中は雨が降っていたのか、地面が濡れていた。厄年夫婦のため、今日は厄除けで有名らしい目黒不動尊にお参りした。

いわゆる自然派やスピリチュアルに傾倒する人間をひどく毛嫌いしているのに、神様仏様にすがっている私を神様仏様は笑っているだろう。

夫婦揃っておみくじは小吉だった。うーん。よくわかっていらっしゃる。

大儲けしたいだとか、幸せになりたい、だとかもうそういうことではなく、単に厄から遠のきたい。例えば出先で猛烈な便意に襲われたりだとか、新幹線に財布・パスポート・通帳・銀行印を忘れてきたりだとか。せっかくいいお肉を食べたのに胃腸炎になってしまうだとか。しかしこれらは自分の不注意がほとんど。自分自身が起因している厄である。

ありがたいことにこれまで他人様からの厄は避けてくださっているので今年は自分様が自ずから厄を生まないようにしたい。

そんなことを護摩業中考えていた。護摩業を実際に見るのは初めてだ。よくプロ野球選手が火の前で念仏を唱えているアレだ。古代インドが発祥らしい。

確かになんかインドっぽい、オレンジ・紫・黄色などビビッドな法衣を身につけたお坊さんが4人、火を囲んで太鼓に鐘に鈴をドンチャカ鳴らしお経を唱える。激しく炎が燃え上がると、お経や演奏も最高潮だ。ライブが終わるとリーダーらしきお坊さんのありがたい説法がはじまる。坊主のMCに人々はこうべを垂れて耳を澄ます。帰りにはライブグッズであるお札をもらってウキウキである。部屋に飾ろう。推しのアクスタだから。

目黒不動尊の境内は広く、梅や椿が咲いていた。春が立つ日にふさわしく素晴らしい。すると褐色の枝の間に黄緑色の鳥を見つけた。

「メジロだ!」

喜んで夫に伝えたが、野鳥に興味がない夫は小鳥の方を見向きもせずスマホを触りながら「ほんまや」と返す。ちゃんと見ろや、と怒って再度鳥のほうを見たら感じる違和感。長い黄緑色の尾、メジロとは言い難い大きな体。赤いくちばし。冬の曇り空には不釣り合いの派手な羽。

インコだ。

しかもたくさんいる。グローバル鳥社会。そしてカラスに追いかけられまわされている。そこまで如実に現代社会を現さんでよろしい。

調べたらワカケホンセイインコというらしい。インドやスリランカからペットとして輸入されたのが野生化して繁殖しているそうだ。結局は人間は愚か、という話になる。最近こういうのばかりだ。

インコ自身、知らぬ遠き故郷のインド。目黒不動尊にどこかそんなノスタルジーを感じて寝床にしているのかもしれない。

帰りに寄った商店街で夫が食べたいと言うから焼き鳥を買って帰った。人間とは愚かな生き物である。

@ochiri
まとまりのない日々のこととか