三田線フレッシュマン

ochiri
·

新年度の幕開け。もう令和も6年目とか信じられないでいる。とにかく暖かくなってくれて嬉しいが3月31日の日曜日、東京は最高気温が28度を超えた。桜も開花が間に合っていない。私の体もビックリしたのか、めったに出ない蕁麻疹が出た。こちらは繊細な生き物なので、もう少し加減してほしいよ令和ちゃん。

4月1日の月曜日、朝から駅はフレッシュマンに溢れかえっていた。外見だけでわかるほど、彼らはみずみずしい。私にもこんな時があったなぁと懐かしみながら、老婆心でこっそり東京の大都会で道に迷う彼らにエールを送った。

今勤めている会社はフリーアドレス(毎日自由に好きな席で働く)なので誰が新人なのか、隣に座る人がどこの部署の誰なのかわかりにくい。人の顔が覚えられない人間には試練だ。先日、他部署の人に用事があったが、顔もイマイチ覚えてないし、どこに座っているかわからない。フロアのあちこちを探すのも面倒なので(横着して)電話したらすぐ斜め前にいらっしゃった。気まずい。そんな状況を見かねた(?)のか、新年度から全社員用のフェイスブックみたいなコミュニケーションツールが新たに導入され、プロフィールアイコンの設定を⚪︎日までに完了するようにとうるさく言われている。SNSに慣れないおじさん(上司)たちが文句を言いながらも必死に互いのプロフィール写真を撮り合ったり、ペットの写真を選んだりしていて平和だった。良い新年度である。できることならこれからも毎日、プロフィールの写真を選んでいたい。

帰りの電車では、向かいに新卒の男の子3人組が座っていた。同じ会社の袋を揃って持っていたのでおそらく同期だろう。敬語とタメ語が混ざり合いながらぎこちなく話をしていて、つい聞き耳を立ててしまった。他愛もない会話のあと、少し長い沈黙が明け、

「このあとメシ、行けたら嬉しいっス」

そう一人がやっとのことで提案すると、残りの二人がパァっと花が咲いたように笑顔になる。あまりに良いシーンでこちらまでニヤけてしまった。今年新卒の子たちは、新型コロナの影響で大学生活も儘ならなかった子たちだろう。なんだか感慨深い場面に立ち合わせてもらって、私は全く関係ないが彼らのこのあとのメシ代を奢ってあげたくなった。奢らないけど。

いつになく穏やかな4月1日だった。夜、お風呂上がりにどうしても暑くなって窓を開けたら心地よい夜風が入ってきた。すると夫が「春のいいにおいがする」と言った。たしかに、春のにおいがした。

@ochiri
まとまりのない日々のこととか