金曜日。仕事を定時に終わらせて、友人と日比谷で待ち合わせ。ティムホーワンでぷりぷりのライスロールとシャッキシャキの空芯菜を青島ビールで流し込めば完璧な週末の完成である。
いよいよ「キック・アス」や「キングスマン」シリーズでお馴染みマシュ・ヴォーン監督最新作「アーガイル」を見る。正直、キングスマンの3作目(2021年公開「ファースト・エージェント」)で自分が思っていたマシュボン要素を摂取できなかったため(映画が不作だったとうことではない)キングスマン関連の映画ではない今回の作品にはあまり興味はなかった。というか、これといったPRも目につかなかったのでチェック漏れしていた。
そんな調子だが私は自称マシュボン監督のファンだ。キングスマンに熱狂的にハマり、当時はジムで延々とコリン・ファース演じるハリーが教会で大勢をブッ●すシーンをタブレットで流しながら毎日10kmランニングしていた。(当時気が狂ったようにマラソンにもハマっていた)
周りの人からすると殺戮ロックンロールシーン(グロ)を公共の場で見ながらノリノリで走っている相当ヤバい女だ。
マシュボン作品のアクションシーン、音楽のセンス、色味、メチャクチャな爽快感。その何もかもが私にブッ刺さる。劇薬だった。家に遊びにくる友人達に無理矢理キングスマンを見せては感想を求めるという最悪オタクムーヴをかましていた。(今も友達でいてくれてありがとう)
そして今回。スコティッシュホールドの猫と角刈りの主人公(あまりの角刈りに、コードネームU.N.C.L.Eの主人公と結びつかなかった)、そして金髪のグラマラス美女。映画のポスターしか前情報を得てなかった私は映画館で4度も騙されることになる。
とにかく、世界一チャーミングな中年の男と女がポップにスパイしてダンスしてボコり合う(愛し合う)。ディスコミュージックと共に劇場で泣きながら笑ったのは初めてである。日々の鬱屈な気分を置き去りに、ただただマシュボンの手のひらの中で転がりながらふざけた内容のスパイ映画を見せられる。これが、あまりにも楽しいのだ。ぶっ飛んだ非現実、オシャレな音楽に乗る暴力、スローモーションのアクションシーン。カラフルな世界。脳がチカチカして喜んでいるのがわかる。中年も全く捨てたものじゃない。昨年にリリースされたばかりのビートルズの最後の新曲、「Now And Then」に乗せて、男と女が愛し合う(ボコり合う)。人生まだまだこれからなのだ。そんなマシュボン監督からの応援メッセージを勝手に受け取った。
友人と別れても興奮冷めやらず、サントラを聴きながら家に向かう途中。なんと商店街の真ん中で飲み会帰りの我が夫を見つけた。さっきまでスリリングかつ最高にチャーミングな映画の中にいた私は舞い上がって後ろからまるで初めての抱擁のように夫に抱きついた。まるで映画だ。私の走馬灯のワンシーンになること間違いなしだ。
そのあと、深夜2時まで夫にキングスマン初作を無理矢理見せ、感想を求めるという最悪オタクムーヴをかました。よくない。