おれの数少ない大学時代の友人が地元である愛媛県に帰郷し、結婚した。大変めでたいことだ。

そして愛媛で結婚式を挙げるから友人代表スピーチをしてほしいと言う。
スピーチ? 結婚式で…? このおれが代表して……?
………。
任せなさい!!
ということで、自力では航空券すら買ったことのないわたくしが、お祝いのために1人で東京から飛行機に乗って愛媛県・松山空港に向かうこと (他に共通の知人も多く出席するが、仕事の都合で現地集合) になった。
何度かブログにも書いている通り、おれは飛行機が大の苦手だ。閉所恐怖症だし、搭乗手続きについて何も理解しておらず、旅行…というか外泊もあまり得意ではない。
しかし、今回はそんなことを言っている場合ではなかった。10年来の特別な友人の晴れの日に立ち合わなければならない。あんたのためなら頑張るよ。
何ヶ月も前から方々の仕事先に「この期間は不在にさせてもらいます」とアピールをし、どうにか都合を付けて式の前日に愛媛へ前乗り。
羽田から正午近くのフライトだったが、心配のあまり離陸予定の3時間以上前には空港内に着いていた。国際線にでも乗るつもりか?
ANAの国内線が通る第2ターミナルで大きな荷物を預け、友人に手土産を買ったりクレジットカードの特典を行使しラウンジで仕事のメールを返したりしていたら、意外とすぐに保安検査の締切時刻に。

元々満席だった松山行き便。しかし途中で機体が変更になったらしく 改めて案内された搭乗ゲートまで結構な距離 (急ぎ足で10分間くらい?) を歩いた。
それに伴って人が溢れたようで、「乗りきれないから次の便に変更してくれたら1万円あげますよ」という魅力的なアナウンスまで流れだす…が、おれのようなエアラインビギナーがトリッキーな動きをすると碌なことにならないのはよくわかっていたので、大人しく予定の便に乗り込む。
若干の遅延もありつつ、2時間も掛からずに松山空港へ到着。滅多に乗らないので相場がわからないけれど、滅茶苦茶に機体が揺れているような気がする。上昇下降の際はタワーオブテラーくらいの浮遊感があり、なかなかスリリングであった。
空港までは式を控えた友人が自家用車で迎えにきてくれていて、偶然近くにいた別の友人と合流して遅めの昼食を取る。
…と、ここまで書いて、4泊5日の旅程を全部書き出していたら冊子サイズになってしまうことに気が付いた。
特におれは食事について長々と語るほうだし、今回は観光名所に関しても書きたいことが山程待ち構えている。
食べ物と観光スポットについての記事は別エントリに纏めるとして、まずは日記として何があったかだけを簡単に書いておこう。
[Day 0]
打ち合わせと仕事の色々で帰宅が遅くなり、深夜1:30から必死の荷造り。
スーツケースを閉めて家を出る直前、ベッドサイドに式で着る予定のスーツのズボンが取り残されているのを発見して大慌てで詰め込む。洋服カバーの中にジャケットとベストだけ入れて満足していたのだった。危ね~。

[Day 1]
1:30に起きてから「いま寝たら確実に寝過ごす」という強迫観念に囚われ、そのまま睡眠を取らずに空港へ。預入荷物の自動受付機の蓋が閉まる勢いがカバのように凄まじく、腕を食い千切られるところだった。

松山空港到着後、一旦道後温泉近くの宿泊先まで送迎してもらい、荷解きをしてスピーチの練習をする。
周辺の宿泊所に大学時代の友人たちが滞在していることが判明したので、遊びにいって近況報告、近隣の居酒屋で一緒に夕食を取った。

この時点でおれは結婚式で着るスーツのシャツとネクタイ&タイピンを決められておらず、自宅からそれぞれ2種類持ってきていたので、皆にコーディネートを相談してアドバイスしてもらう。
ちょっと派手かな、と思っていたブルーとエメラルドグリーンの組み合わせが人気を集める結果に。じゃあ明日はそれでいきます。

道端にあったガチャポン機から入手した愛媛の銘菓「タルト」(餡子の入った渦巻きカステラ) と「坊ちゃん団子」のぬいぐるみ。欲しかった坊ちゃん団子がなかなか出てくれず、計5回も回し、被ったタルトは友人たちに分配した。
深夜、友人の兄弟とさらに別の友人 (大阪から来た) が松山空港に到着したと知って駐車場まで迎えにいく。挨拶を交わし土産品などを手渡して、本日の営業は終了。
ここまで、直近の3日間で合計8時間くらいしか眠れていなかったので、さすがに少し眠かった。けれど目が冴えて寝付けそうにない。おれは神経質かつナイーブなことで有名なので、宿泊所を手配してくれた友人はかなり気を遣ったことだろうと思う。
風呂に入り、部屋に戻ったら 祝儀袋もまだ準備していないという大阪の友人が当たり前のように晩酌を展開しており、その旅慣れした様子が余裕で面白かった。
つまみに食べていた湖池屋スコーンを分けてもらい、歯を磨いてから荷物を整理して就寝。
[Day 2]
宿泊所に付属の施設で朝食。大阪の友人が二度寝をしている隙にパソコンを開いてやや急ぎの仕事を済ませる。
小休憩の後にヘアセットを頼んでいた美容院に行ったのだが、これがまあ言葉を失うほどに酷かった。おれはいま髪が長めだから、万が一にも式典で目障りにならないようにとプロを頼ったのだけれど、なんだかよくわからない大雑把なオールバックにされて (的確にオーダーできなかったこちらにも非はあるが) 15分で6,600円を取られる。
自分で直そうにも結構しっかりジェルで固められていて修正不可能。接客業従事者に対してなるべく寛容にいようと努力しているおれでさえ、「こ、このど素人が~~!」と暴れださずにはいられなかった (さすがに態度には出さなかったが)。
…と同時に、普段の撮影やイベント時に3,850円で毎回良い感じにヘアセットをしてくれている神楽坂の美容室は良心的だったのだな、と有難く思う。巡り合った腕の良いサロンと技術者たちのことを大事にしよう…。

気を取り直して、道後温泉周辺を散策。ソフトクリームやおでんといった軽食を取りつつ、昼過ぎに送迎バスに拾ってもらい、式場へ向かう。ゲストだけで100人近くいる大規模な式だ。
城のような待合室で友人たちと歓談し、教会で新郎新婦の誓いを見届けて、赤い風船を飛ばしたり花びらを撒き散らしたり馬車を追い掛けたりしながら披露宴へ移行。スピーチの役も無事に終えて、豪勢なフルコースを食べる。

これは意味不明な6,600円のオールバックでお祝いの言葉を送るおれの後姿。
友人の親族や知らない大勢の人たちから声を掛けられたり、写真を撮ったり撮られたりとかなり賑やか。どこまでも素晴らしい完璧な式典だった。彼らの前途に限りない祝福があらんことを。
21:00頃、再びバスで2次会を行うレストランまで運ばれ、おれはなぜかビンゴ大会で優勝した (八百長の疑いあり)。
[Day 3]
早起きして朝食を取り、急いで支度をしてタクシーを呼び松山市駅へ一直線。昼に大阪の友人と入れ替わりにチェックインする新郎あるいは新婦の友人にサプライズを仕掛けるためだ。
高島屋の中に入っているハンズ (大型雑貨店) でパーティー用風船や造花、ぬいぐるみなどを大量に買い込んで、一部の巨大バルーンにはヘリウムガスを充填してもらった状態でプーさんのように浮かびながらぷかぷかと撤収。

移動中のエレベータ内で紐が外れて天井 (結構な高さがある) にバルーンが飛んでいってしまうというハプニングもあったが、乗り合わせた親切な背の高い男性が「僕がやりましょう」とジャンプして取ってくれて、事なきを得た。本当にありがとうございます。

タクシーに風船を押し込んで宿泊所に帰るなり、購入したポンプとマスキングテープを駆使して原状復帰できるように飾り付けを開始。大小73個ものバルーンと飛び散らないくす玉クラッカーを装備して友人の到着を待ち構える。
結果、サプライズは大成功し、プレゼントの数々にも大変喜んでもらえた。

午後、友人と大阪の友人の3人でジェラート店に吸い寄せられたりみかんジュース屋に寄ったり目に付いた全てのご当地ガチャポンを引いたり坊ちゃん団子を食ったりしながら、終いには鯛めし屋にまで行き、先に帰る大阪の友人を松山空港まで送っていく。

新郎ないし新婦の友人とドライブをしながら道後温泉近くの宿泊所に戻り、ようやく一息ついた、というところ。

夜。友人から親族や職場の関係者たちから預かってきたという でかい紙袋2つ分の『リストランテ・ヴァンピーリ』を寄越され、光栄にもサインを頼まれる。せっかくなので、めでたそうなゴールドのラメ入り油性ペンでサービスしておいた。
[Day 4]
「ここまで来たら (隣県の) 香川にうどんを食べにいこうぜ」ということで、朝食を取ってから友人の車で高速道路を飛ばす。曰く、昼過ぎにはもう人気のうどん屋は (材料切れで) 閉まってしまう、とのこと。そうなのか。

11時を回った頃、明らかに車でしか行くことのできない秘境のうどん屋で讃岐うどんを注文。別記事に書くが、これはかなり感動的だった。

そのまま快晴&ほぼ無人の瀬戸大橋記念公園を徘徊し、地元のショッピングモール的な施設に寄りつつ、「天空の鳥居」として有名な高屋神社へ。
山道で車ごと転落するのではないかというかつてない恐怖体験をする。

夕焼けを横目に高速道路のパーキングエリアなどに突っかかりながら松山市に戻り、車を駐めてソフトクリームや鍋焼きうどんを食べた。
商店街にあったゲームセンターのクレーンゲームで沢山のひよこをゲットし、「道後ぷりん」の店で150円で買ったゴムのアヒルを連れて風呂に入る。

[Day 5]
朝6:00。5日目にして、ようやく「道後温泉 本館」に立ち入る。

外装はとてつもなく荘厳な見た目をしているが、中は意外にシンプルでコンパクトだった。朝食を取った後、荷物を纏めて宿泊所をチェックアウト。
だけどあと少しだけ道後温泉観光は続く。
駅の近くを歩いていたらドライバー (?) に誘われたので人力車に乗ってみることに。飛行機の時間があり あまり余裕は残されていなかったが、「10分で1周して出発地へ戻れますよ」という言葉を信頼してお願いする。
人通りのない裏道を猛スピードで駆け抜けたり、定番のからくり時計や商店街の中を通って解説や記念撮影をしてくれたりと、充実の内容だった。

1時間ほどで今治タオルの専門店や地元菓子店で土産物を揃え、昼食を兼ねて食べ歩きをしながら大街道を経由して 車で松山空港まで送ってもらう。みかんに飽きている友人の隣で 滞在中何杯目かもわからない「蛇口みかんジュース」を飲んだ。

荷物を預けて握手を交わし、緊張しながら保安検査場へ。定刻よりやや早く羽田空港へ帰還。

そういうわけで、おれは東京に戻ってこの記録を残している。
さわりだけを書くつもりだったのに随分と量が多くなってしまったな。読んでくれた人もお疲れ様です。お付き合いをどうもありがとう。
次回はたぶん旅行中に出会った食べ物の話をするだろう。珍しくて美味しいものが盛り沢山だから、ぜひ見にきてくれよな。
それじゃあ、また🍊