Brace for inpact (Head down!!)

洗われるたこ
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公開:2024/7/22

文学新人賞。おれの書いた長編ミステリー小説が最終候補として選出された。

検索で引っ掛かってしまうのを避けたいので ここでは賞の名称を明かさないが、べつに隠さないといけないわけでもないから、もし具体的に知りたい人がいればDMしてほしい。興味を持って協力や応援をしてくれた全ての人たちに深く感謝する。

最終選考会はX月XX日。頭を下げて衝撃に備えろ

Blueskyのほうにもポストした通り、おれは以前から執着していたミステリー系文学新人賞で最終候補に残った。

大賞を決定する最終選考会はまだ先で、その結果を皆に知らせることができるのはさらに遠く先のことになるだろう。

今回の投稿に際し おれは大勢の人たちに力を貸してもらった。

執筆中に助言をくれたあなたにも、応援の言葉を掛けてくれたあなたにも、本当に心からの感謝を伝えたい。あなた方なしにこの作品は完成しえなかった。

まだ振り返るには早いが、記憶が薄れる前におれが何を考えて投稿作を執筆したのか (万が一にも選考に影響を及ぼすことがないよう抽象的に) 書き残しておこう。


  • この世には沢山の物語があって、けれどおれのために書かれたものは一つもなかった。

  • おれは恋愛的な意味で誰のことも愛しておらず、家庭や子供や特定のパートナーを持つことも 愛玩動物と暮らすこともなく、経済的に苦しく、心身の健康を損なった状態にある労働者にすぎない。

  • おれのような者は、フィクションの世界にすら救われることなく 孤独に死ぬべきなのか?

  • きっとそうなのだと諦めそうになったときに読むための物語を作る。

  • 血の繋がりや性愛を理由として問題が巻き起こったり、解決されたりする展開にはもううんざりだ。おれたちはその物語の当事者たりえない。

  • だからといってそれらを軽んじたり茶化したりするのも違うと思う。

  • 単位として家族以外の親密な集まり・組織があってほしい。

  • 性別・年齢・国籍・その他あらゆる区分においてフラットであることを理想としている。特別な事情がない限り、全ては等しく流動的に描写する。

  • おれ自身が「『現実あるある』を書きたいのではない / 読みたいのではない」ということを忘れないこと。

  • 何のために小説を書いているのか? 社会が醜く無価値なものだとしても、せめて非現実では理想を捨ててはならない。

  • 世界は誠実であろうとする人間に対し報いるべきだ。

  • 娯楽作品なのだから、なるべくショッキングでかつ善意に満ちた結末にする。


おれにしか書けないものなどないだろうが、それがおれの生み出すものを否定できるわけでもないと思う。

おれは毎日が不安で不満な誰かの退屈を壊すためにおとぎ話を書いている。あるいは、生まれながらに祝福を受けず、この世から存在を拒まれ、社会に迎合できないでいる孤高の旅人のために。

確率…というか倍率の観点からのみ評価すれば、おれの作品が大賞を受賞する望みは極めて薄い。しかし「駄目だったらまた来年」とはいかないのだ。

おれは元々システムエンジニアであるから、基本的にはトライアンドエラーの精神を持っている。けれど今回ばかりはそうもいかなかった。

おれにはあまり多くの時間が残されていない。"ONE SHOT ONE KILL" と YONCEも言っていただろう?

まるで緊急着陸前の飛行機に乗っているようだ、と思う。

急激に高度を落とす機内でおれは考える。いつの間にその同意書にサインをしたのだろうか。なぜこの日のこの便に乗り込んだのか。だけどもう遅い。おれは操縦士に…審査員に命を託してしまった。もはや客席でシートベルトを締めたおれにできることはない。繰り返し 冷静な乗務員たちが大声で叫び続ける。

「頭を下げて! ヘッド ダウン!」

窓からもうもうとした煙が見え、轟音が聞こえる。滑走路が目前に迫っている。どうやら車輪は出ていないらしい。機体が地面にぶつかる衝撃を、摩擦を、熱を想像する。接地した瞬間に全てが消し飛ぶ可能性だってある。サイレン。重力。ランプ。明滅。おれは離陸のときにちゃんとエマージェンシーデモを見ていた。だが、適当に聞き流していた奴とどれだけの結果の差がもたらされるだろうか。

テレビで金持ちが「成功には運が必要だ」と言っていた。「うるせえな」とおれは思った。あのとき「その通りです、素晴らしい」とでも頷いておけば結末は違っていたか?

備えて、身構えて、祈るだけ。

おれにはもう後がなく、この不時着が成功することを願うことしかできない。

おれはあの小説に魂を捧げた。いま書いている新作にも、この先執筆するであろう物語にも何一つ惜しまず全てを懸ける。

だから、失うならば全部を一度に。

おれは生きている限り何らかの形で文章を書き続けるだろう。

ここの更新が途絶えたときには、つまりそのようなことだと思ってほしい。

@octopus
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