崩壊するキッチン、求められた弾丸

そんなものを見えるところに置かないでくれないか。

医者の処方する自慢げなゾルピデム。

日当たりが悪くてずっとタオルが乾かない。

スーツにだけは毎日スチームを当てる。

フライパンの径より狭い幅のシンク。

不動産屋はただの廊下をキッチンと呼ぶだろう。

洗われていない3本のフォーク。

同居していた蜘蛛もいつの間にか見掛けなくなった。

心配のために持ち物が増え続ける。

買えばなくなる金を憂う。

読み終えた本を売ったことはない。

ごみは隙間なく積み上がる。

埋もれた部屋には掃ける床があるのか。

もはやダンボールに住む日のほうが近い。

玄関でエナジードリンクのプルタブを起こす。

人前で酒はなるべく飲まない。

噛み砕いた睡眠剤の不愉快な苦味。

おれは料理を好む者のはずだった。

どうしてガスコンロの上にコンビニ袋が投げ捨てられているのか。

「重要」の印が押された何枚もの封筒。

差出人を確かめて郵便受けに戻す。

コインロッカーの中の一丁の拳銃。

伊坂幸太郎は本屋強盗とブータン人の話を書いた。

込められた弾丸には "alza36" の刻印。

おれはあんたを巻き添えに

2発の銃声が、いま

@octopus
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