前提から話すと、おれはかつてミュージシャンであり、システムエンジニアであったが、昨夏に念願たるミステリー系の文学新人賞を受賞して、その作品がついに2025/3/19 (水) に世に放たれる。
何の話か?
これだ。ヴァンパイアミステリー。
おれは訳あって自分の筆名や書名を直接インターネットに書かないようにしていた (リンクを貼ったりはする) …が、ちょっと方針を転換しようと考えている。この話はまた今度相談させてほしい。
その上で、今週の日記本編にうつる。
2025/3/9 (日)
眠るのを諦めて朝からジムで5km走る。仕事の色々な資料を作り、沢山のメールを返した。アイスクリームを食べたい天気だが、コンビニでは目当てのものが売っておらず、悲しみながらビタミン剤などを購入。テレビを点けると「ザ・ノンフィクション」が放送中で、全国を旅する大衆演劇の一座が特集されていたのだけれど、若い役者の女性の覚悟の言葉と渾身の舞台に胸を打たれる。
呆然としてしばらく「自分が何を格好良いと感じるか」について考えたが、やっぱり佇まいと面構えだな、と思った。
2025/3/10 (月)
スーツに着替えて打ち合わせに。街のホテルのティーラウンジで茶を飲みながら…という話だったのだが、相手方の編集者が「ケーキも食べません?」とすすめてくれたので 喜んでチーズケーキとコーヒーのセットを注文。
けれどまあ、物を食べながら資料ありの打ち合わせをするのは至難の業であると学んだ。
来週はイタリアンの店で会議があるのだけれど、大変に不安だ。たとえば、パスタの前で企画書を広げることは可能なのだろうか?
2024/3/11 (火)
例の単行本の著者見本が届く。色々と込み上げてくるものはあるのだが、「おれの頭の中にしかなかったものが『本』になっている」というおかしみがまず一番のような気がする。そうか、立派になって…。

あらすじを読んでくれた人たちからの「ライトノベルなのか?」という声もちらほらとあるようだけれど、これには明確に「NO」と答えておこう。
ただ、ヘビーノベルであるのかどうかというと、どうやらそれも違いそうな感じがする。「広義のミステリー小説」という区分の賞に送り込み受賞した原稿であって、ファンタジー / SFらしい雰囲気があるともいわれているが、どのジャンルのお作法にも則っていない。型に当て嵌めるなら無理矢理 「ハードコア (ハードボイルドではなく)」と呼ぶこともできるだろうか。
本作の非公式なキャッチコピーとして、おれはこのように設定している。
願いを唱えて自分で叶えろ
これが全てだ。あなたならわかってくださいますね。
おれはどちらも好きだが、ライブハウスにアイドルを見に行ったらロックバンドの公演だった、というような期待外れな事態にならないように、念のため。
2025/3/12 (水)
雨が降っていたせいで何かの諦めがついたのか、少しだけ眠ることができた。
原稿の進みは悪いが、昔から考えていた物語の構想案を纏めて仕事をした気分になる。もうすぐ開かれる授賞式でのスピーチも考えなければいけないのだけれど、いまいち自分が (式に来るような立場の人たちに対して) 何を話したいのかわからない。
3/13 (木)
陽気な天気だが、調子はどうだろう。
食事を買いに行った先のセブンイレブンの冷凍ブースでアサイーボウルなるものを発見。食べたことがないスイーツだ。好奇心に負けて購入し、解凍してみると、フルーツとグラノーラが乗ったブルーベリーバナナスムージー? という感じ。悪くない。

原稿を読み直して書けるだけ書く。
これが全く無駄な紙切れになるということを、このときのおれが知っていたとしたら、書くのを止めていたのか、それとも。
2025/3/14 (金)
何もかもがお終いの打ち合わせ。大敗北。なぜ心が死んだときに身体まで朽ちてくれないのか? 早く止めを刺してほしい。

その裏で、おれが一生懸命に描いた真面目な業務用のイラスト。何に見える?

おれの情緒は、世界はどうなってしまうのだろうか。
2025/3/15 (土)
山程の原稿を直さなければいけないのだけれど、己の能力について落ち込んだり怒ったり忙しく集中できない。気晴らしにジムへ行こうと思ったが、雨の予報。
自分の不出来と向き合うのが苦しい。甘い構成、矛盾だらけの設定、ありきたりの台詞。締切ぎりぎりに「時間があればもっとできたはずなのに」と後悔するのはもっと辛いかもしれない。適当に何でも肯定されるのは嫌だし、面白い作品を作りたいと1番に望むのはおれ自身であるはずだから、やはり気が向かなくても向かっていかないといけないのだろうというのは理解している。
でも、ときどき「もう十分頑張ったんじゃないか」と思うことがある。あとどれだけ頑張り続けなければいけないのか、と。
おれは相変わらず狭く汚い日陰の小屋に住んでいる。インターネットの友人たちが「身体を大切に」と心配してくれるので、最近は野菜が含まれる総菜を買って温めたり、コーヒーをミロにかえてカフェインを控えたりするようになった。それでも薬なしに眠れることはない。
同期の作家から「本が出てない人生もあと少しだ」と言ってもらった。灯のようなその言葉に縋り、家に灯油を撒きたい衝動に抗っている。
全てを一変させてしまうような救いが欲しかった。自分たちの単行本の発売がそれに相当するのかどうかはわからない。何も変わらない可能性のほうが大きく、期待ばかりしていると現実との落差で心身がばらばらになってしまうのではないかと恐れている。足が竦んでも、もう後には引き返せない。
息が続かなくなったので この辺りで撤退するが、次の記事は『リストランテ・ヴァンピーリ』の話をするスペシャル回にしようか、というところ。もちろんネタバレはしないから、「舞台裏はどうなっているのかな?」くらいの気持ちで覗きにきてほしい。
それじゃあ、必ずまた会おう。