ロマンとスリルの特急クルーズ

洗われるたこ
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公開:2025/12/12

11月某日。

完全自動無人運転システムで有名な ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線に乗って 竹芝駅の隣「日の出駅」へとカチ込もう。

時刻は16:00前。日が傾きはじめている。どこへ向かうのか?

海だよ、海!

スーツ姿の大人たちが大集合。奥には「東京ベイクルージングレストラン『シンフォニー』」の文字が。

そうだ。おれたちは、船に乗る。

株式会社シーライン東京が運航するクルージングレストラン「シンフォニー」に邪魔しよう、という魂胆だ。同行者は、馴染みの友人で素晴らしい先輩作家である蝉谷めぐ実さん と 荒木あかねさん。

今回乗船する "モデルナ" は、一度に600人を乗せられる900馬力×2基のクルーズ船。

船内にはコンセプトの異なる広々とした9つのレストランと デッキ・土産物ショップなどが入居している。

(ちなみに「シンフォニー」シリーズにはもう1隻、"クラシカ" という名の450人乗りの船もあり、どちらに割り当てられるかは運航状況次第)

事前にWEBで申込み、纏めてチェックインの手続きをしてくれていた荒木さんから紙のチケットを受け取る。記載してある時刻の15分前までに到着手続きをしないと置いていかれるらしい。さようなら…。

陸上の待合室 (地方の空港の出発前ゲートのような感じ) で待っていると、忘年会 (にしてはちょっと早い気もするが) なのか、会社単位で呼び出されている団体も結構多く見受けられた。基本は食事をするレストランごとの入場。

係員の誘導に従って乗り込んでみると、船内は古くて立派なホテルのよう。1992年就航というだけあって、格式高い絨毯敷きだ。想像していたよりもずっとバランスが良く、ほとんど揺れている感じがしない。

16:20。全員が指定席に着座するなり、出航。

おれたちが予約していたのは レストラン「フォーシーズン」の [フランス料理 シェフのおすすめ 14,000 / 1人, ドリンク別]。

他に寿司やアフタヌーンティー、ビュッフェコースなどの選択肢もあった。

船が動き出すと同時に閉まっていたカーテンが一斉に開けられる。どよめきのパノラマビュー。

「どうだ…!」という風にテーブルがセットされている。

ドリンクメニューを見てみよう。写真は撮り損ねたが、ワインやカクテルは沢山のラインナップ。定番の酒の名が並ぶ中、おれが最も心惹かれたのは…

キラキラのゼリーが入った炭酸のジュース。アルコール入りも用意されている。

1,600円 (コース代金と別) もする贅沢な一杯であるが、有難くも、蝉谷さんが我々の分まで気前良くご馳走してくださった。

甘くすっきりとしていて子供に戻ったような嬉しさ。カラフルな直方体たちは半分凍っていて 給食の七夕ゼリーの味だった。

外の景色も眺めたいところだが、どんどんと料理が準備されていく。

食べ終わったらデッキに出ていいよ、とのこと。了解。

品書きが置かれている。

サンセットクルーズは、日の出ふ頭を出たら 羽田空港の脇を抜けて折り返し、舞浜や葛西臨海公園を一瞬だけ見て、お台場を経由し 東京ゲートブリッジを潜るという 計120分の航路だ。

そこまで大急ぎで食事を済ませる必要もないが、ちょっと気持ちは慌ててしまう。

オードブルでございます。

[パテ・ド・カンパーニュ ドライフルーツのコンポート添え]

雷おこしみたいな破片が乗っている。パテは臭みがなく脂身が美味。右上の星型に刳り貫かれた半透明なのは、ピクルス的な歯応えの野菜。何だったのだろうか?

[季節のスープ]

ポタージュ大好き。ホテルの味。

[パン]

2種類。高級そうなバターも付いている。

[鮮魚のポワレ クレームドオマール]

皮目がぱりっとしていて香ばしい。身は柔らかく、オマールソースがよくマッチ。

[特選牛のロティ ソース ディアブル]

美しい見栄え。赤身はしっとり、レバー (だよな?) 的な部分もクセがなくて滑らかだ。付け合わせのポテトを重ねて焼いたもの (左上のブロック) もクリーミーで珍しさもあり良い感じ。

この頃になると、外はいつの間にか真っ暗になっている。結構な速度が出ているのではないかと思うが、船内は快適だ。

給仕の方たちも人数が多くスムーズな進行。おれの背後ではピアノの生演奏が行われていた。

コース料理は終わりに向かう。

[自家製デザート・コーヒー または 紅茶]

ベリーのムースにマスカットのシャーベット、生フルーツと、謎のビスケットの欠片。謎は謎のまま、満足。

さて、お待ちかね、屋外デッキへ出てみよう。

"モデルナ" は5層構造で、4階にオープンデッキ、5階部分にはトップデッキがそれぞれある。

このエリアは食事を終えて以降、立入自由のようだった。貴重品を除くある程度の荷物はレストランの自席に置いておけるから、身軽に散策することができる。

陸が輝いていた。構えていたより寒くはない。しかし潮の香りと後ろに流れていく波が大迫力である。

冷たい海面を見て「落ちたら終わり」と話している荒木さんと蝉谷さん。

工場的な施設の側も通る。コンテナがごろごろ。

飛び込むか、この海に。

著者近影。薄着でも、北国の生まれであるから 大丈夫。

トップデッキは結構な高さ。タイタニック号はこの比ではなかったのだろう。恐ろしいことだ。

ブリッジも…

…通過!

大門にそびえ立つ東京タワーが見えてきたら、そろそろ下船の準備をしよう。

レストラン内でゆっくり過ごしている人たちも多かったのか、デッキは終盤に掛けてやや賑わったものの、それほど混雑していなかった。でも面白いから外に出たほうがいいぜ。

階段を下ると、サクソフォンの演奏会も開かれていた。一度の乗船では回りきれないほどの見所がある。

18:20頃、予定通りに日の出ふ頭に戻ってくる。ずらずらと下船。ああ、楽しかったな。また来たいぜ…

…と思って、何気なく待合所に置いてあったクリスマス時期のクルーズパンフレットを手に取ったところ、今回おれたちが参加したのとほとんど変わらないコースが プレミア付きで設定販売されているのを発見。その料金、なんと2名1組で88,000円。

ただ、何かの記念日やプロポーズに利用する人もいるのだろうし、ロマンチックなクリスマスを演出したいのなら、それくらいの根性を見せる必要があるのかもしれない…にしても、凄い世界があるものだ。

そういうわけで、おれたちの短い船旅は、期待を超え 傷一つない完璧な状態で幕を下ろした。

改めて、心から満喫したといえる半日を共にしてくれた先輩のお二人に感謝をしながら、本件は拍手喝采でクローズする。(蝉谷さん、荒木さん、いつもありがとうございます!)

シンフォニークルーズは1日4便、夕焼けの見えるサンセットプランや、夜景を楽しめるディナーの他、ランチや午後の早い時間帯のコースもある (食事なしの乗船チケットも買えるらしい) から、ぜひ皆も足を運んでみてほしい。

それじゃあ また、おれたちの冒険の記録を読みにきてくれると嬉しいな。


【おまけ】

帰り道、話し足りなくて 浜松町駅の近く「カフェ ラ・ボエム 浜松町」に寄りバスクチーズケーキとハーブティーを注文。

この辺りは夜に開いているカフェが少ないから、貴重なチェックポイントだ。

濃厚なチーズケーキに甘すぎないふわふわのクリームが絶品。この店はサービスで普通の水と炭酸水を選ばせてくれるのも嬉しいところ。お勧めです。

@octopus
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