魔法学校の卒業試験に落ちた

洗われるたこ
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公開:2024/6/1

おれはミステリー小説を書いている。

ジャンルとしては本格ミステリではなく、エンタメミステリーだ。とはいえトリックは重要だし、いつでも執筆のネタ (この場合は「タネ」か?) を探している。

しかし日常生活に謎は少ない。そのため、最近は読書の他にもミステリー系ノベルゲームに挑戦してみたり、リアル脱出ゲームというものに手を出してみたりしている。

今日はその (脱出はしないが) リアル脱出ゲームに行ったときの話をさせてほしい。


会場は新宿の東京ミステリーサーカス。なんと歌舞伎町の中だ。

ビル型の施設となっており、フロアごとに異なる公演を同時並行で開催している。大きめの映画館の脱出ゲームバージョンといったところか。

今回、おれが参加したのは『魔法料理アカデミー卒業試験からの脱出』。

魔法も料理もおれの得意するところだ。試験はあまり好まないが。

何やら「プロジェクションマッピングを駆使した脱出ゲーム」らしいという情報だけを持って、脱出ゲーム経験のある友人と2人でWebから予約を取る。土日祝の前売券は1人3,800円だった。相場というものを知らないから、これが高いのか安いのかはわからない……と思ったが、最終的には納得の価格設定だった。

この公演についてはネタバレが禁じられているから、謎解きの内容については書くことができないのだが、公表されている範囲で説明すると、ストーリーはこうだ。

自身は魔法料理アカデミーの生徒であり、その卒業試験の当日、とある事故によって記憶喪失に陥ってしまう。それでもなんとか試験会場となる調理場に向かい、魔法の調理杖と大鍋を使って料理を作り出すグループ実技試験に挑む。これまで習ったことは忘れてしまっているが、持ち込みが許可されている授業ノートを頼りにどうにか時間内に課題クリアを目指していく。

集団試験ということで、参加者は6人1組のグループに分けられる。おれたちは2人で行ったから、他の知らない2人組×2と相席になった。

会場入口の受付で人数や脱出ゲーム経験の有無等を確認されるのだが、チームは係員がその場で編成しているようだ。ちなみに、おれはこれが初めての参加。他のメンバーの中にも熟練者はいない様子。

男女別ではなかったが、年齢は皆20-30代といったところ。積極性と協調性のあるユーモラスな人たちだった。なんだか本当に大学の講義でグループワークをしているかのよう。

席に着くと、簡易的な説明書きの紙が置いてある。各グループの中でさらにランダムで役割を与えられており、たとえば、おれはパワーを司る「力の魔法使い (?)」だった。他にも「知の魔法使い」だとか3種類くらいの分類があったが、きっとどの役でも楽しめるだろう。 順位付けはなく完全な協力プレイだ。

会場は全体的に非常に暗く、大きなホールをグループのテーブルごとにカーテンで区切っているような感じ。全部で10数グループあったと思う。スピーカーから環境音か何かが流れているのか、周りのグループの会話はあまり聞こえないようになっていた。

公式サイトの写真にもある通り、各グループのテーブルの真ん中にはでかい魔法の釜が設置されている。これにプロジェクションマッピングが投影される仕組みだ。一人ひとりに魔法の杖も貸し与えられ、映像は杖の動きと連動するという。

定刻になり、教官の格好をした係員からの説明が始まる。おれたちは映像と音声の指示に従って……と、これ以上はいけない。

では、結果はどうだったのか?

当然の如く落第した。

いい大人が雁首揃えてこのザマだ。おれは現実で1単位だって落としたこともないのに、6人もいながら全く歯が立たなかった。

時間が足りなかったという訳ではなく、普通に発想が至らなかったことによるFailedだろう。惜しいところまではいったのだが。

答え合わせの後には、皆すごく悔しがっていた。おれも「そこがヒントになっていたのか」と驚くばかり。

脱出ゲーム全般にいえることかもしれないが、柔軟に考えることが重要なのだろう。ときには椅子から立ち上がって周りを眺めてみる必要がある。

所要時間は前説などを含めて120分、謎解き自体は60分なのだけれど、全編通してあっという間だった。パズルもアクション的なミニゲームも面白く、ストーリーも緊張感とフィクション性のバランスが良くわくわくさせられる。夢中になって取り組んだ。

ただ、このイベントに関しては再挑戦すれば確実に合格できてしまうため、リピートはお勧めしない (し、解答を知っている者が混ざっていたら他の参加者も迷惑するだろう)。試験はいつだって一発勝負だ。

後から調べて知ったことだが、この脱出ゲームは2023/7/15-開催されているロングランイベントとのこと。室内で完結するから雨の日でも安心だし、何より世界観が徹底されていて、本当に自分が魔法料理アカデミーの学生であるかのように楽しめる。

正直、体験する前は「プロジェクションマッピングなんて子供騙しなんじゃないか」と斜に構えていたが、そんなことはなかった。クオリティは高く、結構な没入感がある。

(失敗しても) なかなか愉快な経験だったので、歌舞伎町の近くに行く機会があればぜひ参加してみてほしい。

他のイベントになるだろうが、おれも次こそはクリアを目指したい。

@octopus
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