自他共に共同生活ができる人間ではないと思い込んでいた私も、気がつけば家に誰かがいるという環境に慣れきってしまった。
よく聞く主婦のぼやきにあるような、裏返しに脱ぎ捨てられた靴下や転がっているゴミも、今のところはイラついたりすることはなく、お互いそこそこに雑ダラ人間なので、そもそも気力がない時は転がしたままにしておくし。やる気がある時は洗濯かごやゴミ箱にシュートする。適当だ。そんな私でも、時々対応に困ってしまうものがある。
クイックルワイパーをかける私の目の前に、床に置き去りにされたお茶のペットボトルがある。少しだけ飲んだ形跡があるが、中身は残っている。多分、昨日か一昨日の夜からだと思う。
さすがに、開封後に常温で数日放置されたお茶は捨てていいだろう。最近は食中毒のニュースもよく耳にすることもあり、飲むといっても確実に止める。だからつまり、捨てていいはずだ。
でももし、「なんらかの事件の犯人のDNAを採取した証拠品」であるとか(※彼はその手の仕事ではない)、「なんらかの特殊な薬品を持ち帰ったもの」(※ペットボトルにいれるな)であるとか、「なんらかの実験中」であるとか(※床に転がすな)だったらどうしようと思って、捨てる・捨てないで頭を抱えている。
そういう、「多分捨てていいんだけどゴミじゃなかったらどうしよう」というものは処理に困る。「これ、捨てるよ」というLINEを送ればいいのだろうが、昨日深夜に帰宅して朝日よりも早く出勤した休日出勤社畜に死ぬほどくだらない連絡をするのはあまりにも忍びない。
まあいいか…と納得して、私は掃除を再開する。
捨てると知っていたのに。どうせ捨てられるのに。置き去りペットボトルは今も置き去りのままで。