なぜ自炊をするのか

okunokentaro
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やや外食続きになったため、冷蔵庫のピーマンが待ちくたびれた様相を見せており、さっさと食べきりたい。

今晩は、ありものの野菜炒めに解凍したセブンの冷凍牛ホルモン焼を混ぜて、茹でた冷凍さぬきうどんを加えたら、ざっと調味して完成。

こんな手抜き焼きうどんのため、詳細を書くまでもないのだが、そういえば最近こう言われることが増えた。「奥野さんは自炊しててえらいですね」「料理が好きなんですか?」「料理が得意そうですね」などである。1人ではなく、複数人からである。明らかにここの記事を読んでもらった結果な気がする。

自分は、たぶん一般的に見たら「料理好き」に分類されるだろう。料理道具は揃っているし、調味料や香辛料もかなり揃っている。基本的に野菜室には何らかの野菜が転がっており、牛豚鶏もだいたい冷凍されて出番を待っている。これって料理好きなのか?と考えたとき、ひとつわかったことがある。

私は変数の多い作業を好むらしい。

料理が好きというより、変数の多い作業を好み、それがプログラミングだったり、料理だったりするのだ。

料理は膨大な変数を扱う。加熱による食材の変化、火加減の強弱や加熱時間の長短といった変数が伴う。形状の変数もある。薄く切るか、ぶあつく切るか、みじん切りなのか、千切りなのか。歯触り、舌触り、噛みごたえといった感覚への変数。そして香味の変数。塩分濃度や甘み、苦み、辛み、エスニックな香り、和風な香り…。さらには栄養素の変数もあるが、専門家ではないのでここは置いておく。

自分にとって料理とは、膨大な変数を組み合わせた結果を、視覚、嗅覚、味覚に対してレンダリングしていく。そのレンダリング結果の違いを楽しむ「変数を使った遊び」なのだ。そう、遊びなのだ。

これは私がプログラミングするときと楽しみ方の本質は同じである。「こういうことがしたいから、こういうAPIを試してみるか」と「こういう味が食べたいから、この調味料を試してみるか」のモチベーションは等しいのだ。

例えば今晩の例では、簡素な焼きうどんだが醤油を使わずにナンプラーで調味し、仕上げにナツメグを振っている。その結果、和風からは離れ、やや西アジア寄りな風味に仕上がる。

これは、醤油、みりん、だしは和風、ナンプラー、ナツメグは和風ではない、ということを経験で知っており、それぞれの変数によって達成できることを学んでいるからである。とはいえ、個々の知識はあったとしても、組み合わせた時にどうなるのか?これを実践するのが実に楽しい。

そのため、スパイスの歴史や国ごとの使われ方、調味料の文化などを私は読み込む。これは、APIドキュメントや言語仕様書を読み込むことに近い。何かを達成するための道具に対して、その道具が生まれた経緯を把握しておきたいのだ。

ここまでのことを考えた結果として自炊が好きという人間も、なかなか稀有かもしれない。

@okunokentaro
京都生まれで東京在住。様々なWebアプリケーションを開発し続けて10年。すきなものをすきと言っていたい。