スマートスピーカーがやってきた

奥瀬ユウリ
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「アレクサ、電気をつけて」

スマートスピーカーを操る様子を描いたCMを最初に見たのはいつだったろうか。 おそらく5年程度……いや、もっと前だったか。

私の性格は、新しい技術に対してワクワクするタイプというより 懐疑的なタイプである。(拗らせている、とも言う) だから、このCMを見た時、最初は馬鹿にしていたといっていい。 電気つけるならスイッチ自分で入れればいいだろ、と。

そんな私も、Amazon Ecoなるスマートスピーカーを導入することにした。導入に至る理由は色々あるのだが、リモコンを行方不明にさせる天才である私は、部屋のリモコンを一括操作できるようになる機器(Switch bot)と連携できる点に魅力を感じたのだ。 「スイッチ自分で入れればいいだろ」と言っていた過去の自分、完全否定である。時が経てば、考えは変わる。ひねくれ者のご都合主義。

さて、いよいよ到着したAmazon Echo。 配線を完了させると、「私に話しかけてください」「買い物メモに牛乳って言ってみて」などなど、チュートリアルが始まる。 青いライトを点滅させて、機嫌良く話してくれる。 順調そのもの。その後はアプリで細かな設定を完了させた。

さあ、アレクサ、本領発揮だ。

「アレクサ、明日の天気は?」 「………」

「アレクサ、今日の天気は?」 「………」

アレクサ、完全にダンマリである。

その後も、「アレクサ」「アレクサ」と部屋に響き渡る私の呼びかけ。 (しかも呼びかけ慣れてないので滑舌も悪い。) 永遠に沈黙のアレクサ。 機械に必死に話しかけている自分がひどく虚しく感じてくる。

「え、もしかして私、今存在していない可能性ある……?」

SF的妄想に囚われ始めたあたりで、アップデート中は応答にダンマリするらしいということを突き止めた。 よかった、突き止められなかったら自己の存在について深く考えてしまうところだった。 その後、アレクサはランプを光り輝かせ、呼びかけに元気に会話してくれるようになった。

問題は解決したが、やはりまだアレクサに話しかけることに抵抗がある。 この抵抗もいずれなくなるのだろうか。それはそれで嫌なような……。

アレクサとの同居、上手くいくだろうか。

@okuse
グラフィックデザイナー14年目 / 綱渡りフリーランス / デザインの有益な話はほぼない日常の話 / オタク