30歳から同人活動はじめた -前編-

奥瀬ユウリ
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私は昔から空想しがち人間であり、何十年もかけて繰り返してきたので、妄想の筋肉だけは発達している。二次創作、なるワードを知らない時から、好きな漫画やゲームのストーリーの「あったらいいな物語」を自分で妄想しては楽しんでいた。

思春期になると、イラストに描いた。私の年代のオタクが必ず通るであろう「HTMLで自分のサイトを作る」も、もちろん経験済みだ。

しかし漫画を描くことはしなかった。

当時、私が中高生のころは、まだPCでコミックを描くソフトが大きく流通していたわけではなく、そもそも自分専用のPCを持っているのも、ましてペンタブを持っていることでさえ割と珍しかった。(余談だけれど、幸運なことに兄が機械オタクだったため、アキバで仕入れたパーツで作った組み立てPCや関連機器を私に融通してくれた。とても定価で買えないペンタブが私の家にあったのはそのような奇跡的な事情である)

イラストを描くのはPCが主流になりつつはあったが、漫画はアナログ派が多かった。あまりに作業量が多いし、Gペンとか難しすぎるし、トーンも高い。お金のない中高校生時代、やる前から諦めていた。逆に言えば、そこまでの熱意もなかったのだが。

それ以後、美大受験を経て「もう2度と何も描きたくない」と言うくらい絵を描いてしまったため、学生時代も社会人になってからも、オタク的なイラスト制作などの創作活動は一切しなかった。そもそもデザインの仕事をやるだけで私の脳内の「ものを作る機能」はオーバーヒート状態だったのだ。家帰ったら何もせず寝たい。

そんな20代が終わり、30代に入ったころ。

とある作品に大ハマりした。

長らく眠りについていた、脳内妄想力が大爆発。イラストだけでは表現できない「あったらいいな」物語を形にしなければ。

「これは描くしかない」

ipadやApple Pencilの登場、クリスタの普及などでアナログよりは手軽に始めやすくなっていた。また、仕事柄、印刷知識だけはあるので入稿作業などもそこまで難しくない。そしてなによりこの頃、職場を変えていたので、以前より余裕がある。

「やるしかない」

こうして初めて同人イベントの大海原に30歳ど素人が飛び込んだのだった

@okuse
グラフィックデザイナー14年目 / 綱渡りフリーランス / デザインの有益な話はほぼない日常の話 / オタク