もう20年ちかくも前になるだろうか、突如としてカラオケにハマりだした。もともと歌うことが嫌いではなく、(家業の)配送車に乗りながらカーステレオで好きな曲を流してはひとりリサイタルに興じていたのだが、やはり歌手の歌に合わせて歌うのとカラオケは違う。「ひとりカラオケ」もまだ一般的ではなかった当時、ネットでカラオケオフみたいなイベントを探して参加したところ、その場で「うたスキ」というカラオケ専用会員サイトがあることを知り、さらにサイトを通じて知り合った人たちと交流するに至った。「うたスキ」サイトでは自身がカラオケで歌っている動画を撮影することができ、離れた土地に居ながら、オフ会(リアルタイムではないが)の気分を味わうこともできる。趣味の合う人々とコミュニティサークルを作ることもできたので、メンバー同士で特定のジャンルや指定曲を動画にアップし、コメントをやりとりして楽しんでいた。
動画を視聴しているとわかるのだが、歌い方や楽しみ方というのは本当に人それぞれで、歌い手の技量に関係なく「その曲が好きで心から楽しんで歌う様子」を見ていると、自分などはこちらも楽しくなってくるように感じるのだが、サークルメンバーの中にはそうでない人もそこそこいたようだ。必然、人気が集まる人(歌がうまい、ルックスがよい等)と、過疎ってしまう人の間に「壁」みたいなものができてしまい、ぎすぎすした雰囲気が生じてくる。
これは、ことカラオケに限ったことではないだろう。Twitterなどでアマチュアの絵描きさんがファンアート等をアップすると、「原作やキャラ愛がにじみ出ていたとしても技術的にはそれほどでもない作品」はほとんどスルーされるし、時には罵倒に近いコメントがつくことすらある。そういう例を見るたびに悲しい気持ちにさせられるのだが、それでもこの世界には(そういった現実を超えて)その人の情熱や愛を正対して受け取ってくれる人も確かに存在するのだ。
例えばTwitterの某相互さんは、自分の好きな某ゲームの某キャラクターのファンアートを、技量を問わず、分け隔てなくRTしている(ものすごく尊敬している)。同じような人を別の漫画作品ファンの中に見かけたことも何度かある。「下手はひっこんでいろ」という声の大きい輩が幅を利かせるようなジャンルやコンテンツは、短期的にみれば研ぎ澄まされていくのだが、その代償としてあまり長続きしないように思う。
「うたスキ」もその例に漏れずコミュニティサイトとしては短命に終わった。