数人なの?

oll_rinkrank
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沖田瑞穂先生の新刊を読み始めたのだけど、その冒頭に「神話学者は日本に数人…」というような記述があって、えーそんなに少ないの?とびっくりしてしまった。沖田先生ご専門の比較神話学にジャンルをしぼっての話かもしれないが、まあ確かに学生の頃を思い出してみても神話や伝承文学を専攻する人というのはほとんどいなかったような気がする。所属していた人文学部では現代・古典の日本文学や、英米文学を専攻する人が半分程度、残りの大部分は歴史学という感じで、ヨーロッパやその他の地域の文学に興味のある人は少数だった。同期に限ると、隣のゼミでひとりだけ、北欧のサガについて学んでいた人がいたと記憶している。

Twitterで伝承についての蘊蓄や(ヘンテコな)考察を語ると、ごくたまに内外の方から数多くのイイネをいただくことがあるのだが、ツッコミや質問がきたり、あるいはそこから論を広げて話が膨らんでいくようなケースはほぼ無いといっていい。もとよりフォロワー数が大したことないので、そういう状況こそ当然なのかもしれないが、民俗学などにも近い、考古学や歴史や言語系の考察をやっておられるアカウントさんの場合は、良くも悪くも様々な人たちが活発に意見を交わしていて、なんというか、まあなんというか…(羨)。

では、そういった(近いジャンルにある)アカデミア関連の方々にはまったく話が通じないし、深い興味も持っていただけないから、自分の考えなどはまったくの的はずれで、論ずるにも値しないのだろうかといえば、じっさいそんなこともないように思う。

大学などで研究されている学問の領域とは少し離れて、芸事やアートに関わる人の中に、自分の考察と通じるようなことを発信している人が少なからずいるのだ。彼らは論によって(積極的に)語ろうとしないだけで、そのパフォーマンスの中に、あるいは放たれる言葉の中に、断片的に、神話的なメッセージを込めているのである。

おそらくそれは、ある種、身体を通過することによってしか語りえないものなのかもしれない。神話や伝承を語るために、そこに近いところで研究されている方に不足しているのは、圧倒的な「神話的体験」なのだろうと思う。